掲載・更新日:2020.07.07

物流現場の人手不足を解決する手段の一つとして、物流ロボットへの注目が高まっています。新たな生活様式でECへのニーズがさらに高まると予想され、物流倉庫の運用も大きく変わる潮目にあるといえるでしょう。世界的に物流のオートメーション化が進む中、ロボット導入はより加速していくはずです。
ロジザードはこれまでも、物流業務の省人化、効率化の確実な一手として、物流ロボットの導入を提案すると共に、弊社のクラウド型WMSとロボットの連携を進めてきました。
なぜロジザードが物流ロボットとの連携を強化するのか、ロジザードとの連携が誰にどのようなメリットをもたらすのか? 弊社会長(当時)と社長、上海でいち早く物流ロボットとの連携で実績を上げている中国法人のメンバーが、連携開発の背景と未来展望を、オンライン会議を通じて語りあいました。

ロボットと人間の共同作業が残る物流の現場

人手不足が深刻化する物流の現場に、新型コロナウイルスによるニューノーマルという環境の変化が加わりました。物流量の増加に人手がいよいよ追いつかなくなり、物流ロボットへの注目度が高まっています。

代表取締役社長 金澤茂則(以下、金澤): 物流ロボットが注目され始めて3年ほどになります。導入はまだ本格化していませんが、コロナ禍により変化の兆しが見られます。EC利用の活発化で物流量が増大化しており、人手に頼らない仕組みづくりがいよいよ喫緊の課題となっているからです。
物流のオートメーション化には、自動倉庫やRFID、マテハン機器の導入など、様々な手段やソリューションがあります。中でも「人手不足」という課題に対して効果が高いのが、物流ロボットです。その理由を述べるには、まずオートメーション化における物流特有の事情を知っておく必要があるかと思います。

取締役会長(当時) 遠藤八郎(以下、遠藤): オートメーション化については、製造業ではかなり古くから行われていて、日本では70年代半ばから80年代にかけて、ファクトリーオートメーションが進みました。当時はインターネットこそありませんでしたが、工場内の生産ラインでは非常に高度な自動化の仕組みができあがっていました。90年代に入るとコンピュータが進化し、コンピュータ制御のロボットによる製造が主流となります。ロボットは、同じことを繰り返すことが大得意で、部材の重さやサイズが決まっていれば大量生産が可能です。少品種大量生産の時代には、製造からパッキング、配送手配まで、ロボットの特性をフルに発揮できました。多品種少量生産が求められるようになると、生産計画にあわせて製造ラインをハンドリングする必要が生じてきましたが、これに対応するロボットも開発されました。バブル期に製造工場が海外に移り、国内のオートメーション技術の進化には一時期停滞が見られたものの、製造現場は比較的早い時期からロボットによる自動化が進んでいたのです。
一方で、物流は製造の生産ラインとは異なり、取り扱うものが決まっていません。「何が来るかわからない」ので、人が介在しないとハンドリングできないのです。今は、インターネットを通じてサプライチェーン全体の動きが見えるようになり、状況は改善されてきていますが、それでもどうしても人間が関わらないとならない部分が残っている。それが物流現場特有の事情です。

金澤: かつての物流倉庫の自動化は、自動倉庫など一品大量の商品をパレット単位でハンドリングするような、一連の物流工程を大量に処理することが目的でした。しかし会長の話にもあったように、梱包の不定化や小口化など物流要求は変化しています。こうした背景を踏まえ、人が行う一部の作業を代替させつつ、人にはできない限界を超えた働きを、ロボットに期待しています。今の自動化は、とにかく人手不足対策なのです。

遠藤: 物流倉庫の仕事は、メーカーのように製品の仕様を詳細に把握できません。対象物の素材・形状・大きさ・重さなどの把握は、作業者の知識と経験に依存する大変難しい仕事です。倉庫業務で入荷が一番重要だといわれるのは、入荷するまで商品形状や梱包形態等が解らないことが多いからです。さらに、庫内では「保管・検品・ピッキング・梱包」等々の作業があります。多くの工程で、商品の認識とハンドリングに人間の「手先・指先」が必要な仕事があります。
人の手作業とは「早く正確」が無理なのです。「早くやれば精度は落ち、正確にやれば遅くなる」のが道理です。ここにロボットと人との共同作業が必要となります。ロボットは腕力や脚力等の「力」のほか、最新ITでは視覚、聴覚と記憶(記録)においても人を凌駕します。しかし、人間の手先・指先の代わりとなるロボット機能は、まだまだです。最新のITは五感の中の視覚と聴覚に優れていますが、触覚・嗅覚・味覚において人には及びません。五感と記録(記憶・脳の機能)の連携への道は、まだ遠いといえます。五感で得る原始情報がアナログ情報で、それを記号化して他者に伝えるのがデジタル情報技術です。物流業務ではアナログ情報に依存する業務が多いのが現状ですが、ロボット化は革新の道へと進む第一歩といえるでしょう。


物流現場の運用効率を大きく向上させた、AGVとロジザードの連携

金澤:これからの物流は、人がやらなくてもよい部分を、極力ロボットに任せていく発想が必要です。当社では、2019年に株式会社ギークプラスのAI物流ロボット「EVE」と、ロジザードZEROを連携させて、新しい物流運用の仕組みを構築しました。作業の平準化と業務効率の向上が図られ、人手不足課題解決の一助となっています。
参照:ロジザード提供のクラウドWMSがギークプラス社のAI物流ロボット「EVE」と連携

遠藤: 現状の物流ロボットは、特定倉庫・特定荷主・特定商品・特定取引といった、限定範囲が狭くルール化されたビジネスロジックで動いています。私は、ZARAやAmazonなど、米国や欧州で多くの現場を見学しました。最先端の素晴らしい設備を整えていますが、自分たちのルールでしか運用しないので稼働しない時間が多く、もったいないと感じました。運用を複数の荷主でシェアできるようになれば、空き時間を作ることなく稼働させられ、波動にも柔軟に対応できるようになるなど、効率は確実に高まります。


ロボットは止めている時間を少なくするほど、能力を最大化できる

金澤: ロボットは「働かせたい時間だけ働かせられる」ことが強みで、止めている時間を極力少なくすれば、その能力は最大化されます。こうした事例は、中国が早いです。物流現場の人手不足は、ECが急成長した中国でも同じで、効率化を目指して、新技術が次々開発され実用化されています。技術的には未熟でも、早くスタートして市場を確保しよう、やりながら問題を解決しようという考え方で開発が進むので、とにかく進化のスピードが速いのです。我々は、当社の中国法人を中心に、AGVとロジザードのクラウド型WMSを連携させる製品開発プロジェクトをスタートさせました。
参照:クラウドWMS『ロジザードZERO』の中国OEMサービス『e-倉管』が 上海にて自動搬送ロボット(AGV)導入センター稼働

: ヤマトホールディングス傘下の「雅瑪多国際物流有限公司(以下、YIL)」様と取り組んだプロジェクトです。3PL事業者向けをコンセプトに、複数の荷主で使うことを想定し、W11(※1)のような大きな波動にも大量の出荷を処理できる仕組みを目指して「e-倉管(※2)」との連携機能を開発しました。
※1:W11とは、中国で毎年11月11日(独身の日)に行われるECの大セールイベント
※2:e-倉管は、ロジザードZEROの中国向けサービスブランド
参照:e-倉管

: 中国では、倉庫の自動化に対するニーズがとても高く、大手物流会社はほぼロボットを導入しています。中国の消費は通販がメインで、商品のSKUが多いため、複雑で面倒なピッキング作業をデジタル化で正確に行う動きが進みました。その後は、作業効率の向上や人やモノの移動に関する自動化へのニーズが高まっています。特に物流現場は、人手不足で人件費が高騰しています。労務管理上もロボットの方が人よりも管理しやすいという理由もあり、ロボットを中心としたオートメーション化が急速に進んでいる背景があります。
YIL様は、以前より大量出荷に対応できるAGVに注目されていました。3PL事業者も、ピッキング工程でAGVを利用したいというニーズがあります。ロボットを複数荷主で利用できれば投資対効果は高く、e-倉管を連携したAGV導入の提案は、中国の日系物流現場で初のAGV導入モデルを作りたいというYIL様のニーズと合致し、好意的に受け止められました。


中国でいち早く「複数荷主」でのロボット&WMS運用を実現

開発はどのように進められたのでしょうか。

: ギークプラスのAGVとの連携は、日本側でアッカ様と先に開発していましたので、その仕様をベースにしました。中国物流特有の大量のデータ処理と、複数の荷主で使う現場の運用を想定し、YIL様の意見も伺って機能開発をしました。ギークプラスのAGVのシステムバージョンが日本と中国では異なり、仕様設計書をそのまま使えずに修正を重ねましたが、日本側のプロジェクトメンバーと密にコミュニケーションをとりながら進めていきました。

: 中国では、新しいシステムの問題は、走りながら解決しようという考え方で開発が進みます。今回のシステムは、当社でも中国では初めての試みでしたので、やってみないとわからないことは多々あり、細かいデータの連携部分は実稼働の中で調整していきました。日本で得た運用上のノウハウも共有してもらい、中国ならではの運用の仕組みも取り入れ、稼働しながらシステムを完成させました。日本のメンバーとは常に情報共有しています。修正が必要になるたびに報告し、意見をもらいながら改善していきました。

: YIL様では、AGVの導入で作業員はステーションでモニター画面の表示を見ながら、ピッキング作業を行うようになりました。従来は、WMSから出力されるリストを見ながら、作業員が倉庫内を歩き回って商品をピッキングしていましたが、歩くことなく正確にピッキングできるようになったと、現場のスタッフの方々にも喜ばれています。

: YIL様は、新たな物流モデルを見学できるよう、導入した現場を開放し、新しいビジネスチャンスのきっかけにしています。AGVは、サンプル品などSKUが多くピッキング作業の負荷が高い化粧品の通販に向いているので、こうした荷主様も新しいシステムに興味津々です。


ロボット化にロジザードが果たす役割とは

スケールが違う中国での開発、運用経験は大きいですね。

金澤: 中国では、今回のコロナ禍で物流ロボットが大いに活躍しました。ロックダウンや、春節で帰省したスタッフが移動制限で復帰できずに、多くの物流企業が滞る中、ロボットをフル稼働させて人間の作業を最小限化した企業は、出荷を止めることなく業務を続けることができました。「慢性的」な人手不足に加え、「突発的」な人手不足の場面でも、ロボットは実績を出せることを証明したのです。

遠藤: 今はまだロボットは高価で、中小の3PL事業者が単独で入れられるかというと厳しい状況です。そこで我々は、誰でも低コストでロボットを使ってもらえるよう、複数の荷主で運用をシェアする環境を提供しよう、というテーマに取り組んだわけです。

金澤:大企業の荷主なら、一つの荷主でもボリュームがありますから、ロボットの導入効果が出ますが、中小企業の荷主は物流量が少ないため、効果が出しにくい。今回の取り組みは、要するに「イワシの大群をまとめること」がコンセプトです。たとえば、4tトラックが複数の荷主の荷物を積めるのと同様に、AGVも複数の荷主でシェアすれば、運用コストが格段に下がり効果が出ます。
当社には、ハンディターミナルを複数の荷主さんで使えるように標準化してきた歴史があります。今日は荷主A、明日は荷主B・・・と、1台のハンディターミナルを複数の荷主様に使っていただく思想を、ロボットにも展開していこうと考えています。
昔はハンディターミナル1台でも高額で驚かれましたが、今や一般的に利用されています。同様にロボットも最初は費用感に抵抗があるかもしれませんが、導入メリットは大きい。「そろそろロボット化の時代へ行きましょう、我々はこういう手を準備してきました」と、差し出せる状況にあります。


物流現場の効率化は、早く始めた方が圧倒的に有利

ロボット化に進みたい事業者様が導入しやすい仕組みがあるということですね

金澤: 物流現場へのロボット導入は、今後どう考えても不可欠です。運用設計がしっかりしてさえいれば、必ず効果は出ます。ロジザードはWMSの部分で、ロボット連携の知見を蓄えています。ですから、WMS連携の開発に時間やコストをかける必要がありません。また、複数荷主への対応が可能になることで、ロボットの導入コストそのものも分散できます。リース、レンタル、サブスクリプションなどのスキームも整いつつあり、導入のハードルはぐっと下がっています。新技術の導入は、早ければ早いほどコストメリットに加えてノウハウメリットが生まれます。これにより企業競争力が高まることは、間違いありません。

: 中国が良い例ですが、早く始めた人が市場を制するのは事実です。

金澤: なんといっても、ロボットの導入効果は「実利」として表れます。AGVを導入した企業は、はやいところは半年で人員工数を50%削減できています。コストメリットは確実なのに、導入に二の足を踏ませているのは、量的メリットを荷主1社で判断しようとしているからではないでしょうか。3PL事業者でも、複数の荷主でシェアすることを前提にすれば、投資回収は十分に可能です。


ロジザードの知見を利用して、ともにロボット化の時代へ

それでも、「導入したいがコストを吸収できない」「ロボットのことはよくわからない」と腰が引ける事業者様も、いらっしゃるのではないでしょうか。

金澤: 「やらないと負けるかも」という話です。機械化、自動化に抗う物流会社は、今後淘汰されるかもしれません。中長期的に見て人手不足はいっそう深刻化しますし、Withコロナ時代のEC需要はより増えていくでしょう。
また、労務管理上もロボットを採用する大きなメリットがあります。たとえば、労働時間管理、シフト管理、安全管理、衛生管理・採用管理など人にかかわる管理は常にリスクを含みます。そういったリスクが軽減するメリットは、きわめて大きいと思います。

遠藤: 自分たちにロボットは使いこなせないと思う方もいらっしゃるかと思いますが、そんなことはありません。ロボットはITでありながら、デスクワーク用のITのようにブラックボックス化しておらず、目の前で機械が動いてその機能を見せてくれます。課題も見えやすく対処もしやすい。変な動作をすれば、誰でも「おかしいよ、変だ」とわかります。それ以上に、「スゴイ!」と喜ばれることの方が圧倒的に多いのです。使うことは決して難しいものではないことも知ってほしいですね。

金澤: 誰もが物流ロボットを活用できるようにすること。これが、ロジザードが提供する付加価値だと考えています。我々は、物流ロボットを活用する物流運用を標準化しました。自社でロボットを導入しようとすれば、分析、工程の設計、各種システムとの連携、検証など、すべてを一から自力でやらなければなりません。WMSとの連携ひとつとっても、通常1年の開発期間と相応のコストがかかります。でも、ソフト開発を含め、我々が先回りして使えるところまで使い込んできました。特に中国における実務経験で、システム管理の知見も含めて、運用ノウハウを積み上げています。何よりもこれを提供したいと考えています。

物流ロボットとロジザードの連携は、ステークホルダーすべてがWin-Winの関係で、効率化と生産性の向上が期待できます。今後も用途に応じて最適なソリューションを提供できるよう、物流ロボットの選択肢を積極的に拡げていきます。ロボット導入に悩む時間はもったいない! 倉庫と共に運用設計の実績があるロジザードがお手伝いしますので、ぜひご相談ください。