急速に進むオムニチャネル化。顧客の購買体験の最適化という、マーケティング的な観点から論じられることの多いオムニチャネルですが、課題として見逃せないのがECサイトと実店舗の在庫管理です。EC向けクラウドWMS「ロジザードZERO」を提供する当社には、ECも店舗も運用するお客様から、物流倉庫のみならず実店舗も加えたすべての在庫情報を一元的に管理したい、という声が多く寄せられていました。こうした強いご要望にお応えして、2019年5月にリリースしたのが、クラウド店舗在庫管理システム「ロジザードZERO-STORE」です。今回は、ロジザードZERO-STOREの開発に携わったメンバーに、誕生の背景と狙いについて聞きました。

店舗在庫の見える化、ニーズのルーツはECの隆盛にあり

お2人のロジザードでのお仕事について、まずお聞かせください

執行役員システム統括部長 橋本修司(以下、橋本)

システム統括部内には、開発部とシステム部があります。開発部は文字通りシステムや製品を作る部門で、東京と秋田に拠点があります。プロパーとパートナー企業のメンバー、約25名の体制です。システム部は主にお客様のところに伺い、納品、導入、活用支援などのサービス活動を担います。カスタマーサポート(コールセンター)も含めて、約30名います。
私は今、システム統括部をまさに統括する立場におりますが、もともとは営業出身です。前職は店舗用品などを扱う会社の営業マンで、この時にロジザードの代理店として製品を顧客に提案していました。つまり、お客様との接点でロジザード製品を見ていたのですが、将来性やポテンシャルに魅力を感じて、2011年に入社しました。

システム統括部開発部開発1課 佐藤知幸(以下、佐藤)

私は、秋田県横手市にある横手開発センターにいます。前職もエンジニアで、主にJavaでのフレームワーク開発、プリンタアプリ開発に携わっていました。ロジザードには、受託ではなく自社開発というところに、開発の上流から下流までかかわれるおもしろさを感じて2011年11月に入社しました。それ以来、ロジザードZEROの開発から始まり、WMS一筋で今に至ります。

「ロジザードZERO」と「ロジザードZERO-STORE」の違いを教えてください

橋本: いずれも「在庫管理システム」ですが、ロジザードZEROが倉庫内在庫をターゲットにしているのに対し、ロジザードZERO-STOREは店舗内在庫をターゲットにしているところが大きな違いです。現在、当社では「統合的に在庫をとらえていこう」という視点をベースに、製品開発を進めています。在庫は倉庫にも店舗にもあり、これらを統合的に可視化するためのひとつのツールとして、店舗専用の在庫管理システムを開発しました。

佐藤: もともとは、クラウド店舗在庫管理システム「POSぴたRBM(以下、POSぴた)」という製品があり、これを改良しつつZEROに寄せた機能を付加していったものが、ロジザードZERO-STOREです。ロジザードZEROのデータベース基盤を活用しているのでロジザードZEROとのシームレスな連携が可能で、全社的に在庫情報が見られるようになります。

橋本: 特に、ブランド品や高単価商品、サイズ展開の多い商材をECと店舗で販売しているお客様は、販売機会の損失を防ぐために、倉庫間や店舗間での在庫移動管理が重要です。ところが、倉庫の中の在庫数は見える化されていても、百貨店やテナント出店している実店舗の在庫数までは見えません。いちいち店舗に電話して、在庫の有無や数を確認しなければならないのが現実です。これをどうにかしたいというお客様のご要望に応えて、ロジザードZERO-STOREでは、
・商品のバーコード管理
・店舗在庫のロケーション管理
・店舗から倉庫の在庫を確認
・店舗別の単価設定
・売価変更予約
・発注内容確認機能
・閲覧権限設定
・事前棚卸し
といった機能を備えました。ロジザードZEROとのオプション連携で店舗から物流倉庫の在庫の見える化や、倉庫・店舗間移動をスムーズに管理できるのが大きな特長です。ロジザードZEROユーザーの要望に応えたシステムですから、連携が考慮されていますが、もちろん店舗用在庫管理システムとしての単体利用もOKです。


開発ポイントは、スマホ対応と店舗在庫の「見える化」

ロジザードZERO-STORE開発の背景と経緯を教えてください

橋本: POSぴたのコンセプトは、携帯(開発当時はいわゆる「ガラケー」)端末で手軽に在庫管理ができることでした。百貨店に入るアパレルメーカーなどは、百貨店のレジではどの商品がどのくらい売れたのかがデータとして取れません。自社の販売データが取れないという課題を、手軽なツール(ガラケー)で解決したのがPOSぴたでした。品番のバーコードが付いた値札の半券をとっておき、それを閉店後にまとめてスキャンして、売上データなどの情報を本部に送る役割を担ったわけです。

佐藤: ガラケーに簡易的なスキャナを取り付けたタイプや、auとはスキャナ一体型の専用ガラケー端末&アプリを一緒に作りました。

橋本: 店舗の現場で毎日の売上を記録するというPOSぴたのライトな仕様から、在庫情報全体を取れるようグレードアップしたのがロジザードZERO-STOREで、開発ポイントは2つあります。ひとつは、スマホ対応にしたこと。スマホの普及で、スキャナの代わりに付属カメラを利用できるようになりました。ただしスキャナ的な読み込みを可能にするため、スマホのカメラにエンジンを付けて高速でデータを取れるよう改良しました。もうひとつのポイントは、本来はPOSレジにある機能を独立させ、そこにロジザードならではの在庫情報を付加したことです。従来、店舗在庫とEC在庫はそれぞれ別々に管理されました。特に欠品は商売上致命傷になるので、ECでは在庫をEC専用に確保して、その数をきちんとサイトに反映するためです。ただ、EC以外にも販売チャネルを持つメーカーとしては、商品すべてを無駄なく売り切りたいと希望があります。万が一EC在庫がなくなった時に、店舗に在庫があるなら回したいという要望が出てくるわけです。


在庫の可視化で、販売機会ロスの解消と業務効率化を実現

佐藤: ところが、店舗の在庫をリアルタイムで見る方法がありません。だから、いちいち電話で店舗に確認するという非効率な作業が生じます。

橋本: どのチャネルからでも商品を出せるように、在庫数がリアルタイムで分かれば、販売機会の損失を防げるのに・・・と、必然的に「在庫の動きを一元的に見たい」というニーズが生まれ、そのソリューションとしてロジザードZERO-STOREが開発されたという経緯です。

佐藤: 店舗の在庫は、アプリを通じて見られるようになります。そうすれば、いちいち店舗に電話しなくてもよくなりますよね。業務中の電話はスタッフも接客や作業を中断しなくてはいけないですし、時間のロスにもなり効率が悪いですから、店舗ではできるだけ避けたい作業だと思います。

橋本: リアルタイムで見られるといっても、厳密に瞬間での在庫数までは把握しきれません。ある程度在庫に厚みがある店舗から商品を回す、など遊びは必要です。何かで話題になり売れ行きがすごい商品などは、在庫がアプリで見られるからといって真に受けるのは危険です。ケースバイケースで見方を調整することは必要です。でも、そもそも売れ筋商品は黙っていても売れるのですから、販売機会ロスを心配する必要はありません。ロジザードZERO-STOREは、定番商品などでの活用がフィットします。


アジャイル開発やAWS上での構築など、新しいやり方に挑戦!

開発のプロセスについて、教えてください

佐藤: 2018年6月頃にプロトタイプを作り、具体的にロジザードZERO-STOREの検討を始めました。

橋本: こういう機能で、こういう使い方ができるもの、といったイメージはできていましたが、それを実際の製品として落としこむところは少し苦労しましたね。

佐藤: 営業活動をする東京で構想が作られ、システムの設計・開発は秋田でという分担だったのですが、最初は東京から提示されるイメージの共有が難しく、理想を形にする作業に苦労しました。

橋本: 従来、秋田の開発センターは「作る」ことに特化していました。要件定義書や仕様書など、開発してほしい内容を紙に落として依頼する流れだったのを、ロジザードZERO-STOREでは構想から入ってもらうよう、新しいやり方にチャレンジしました。何をどう作るかという観点で、開発チームの守備範囲を広げたいと思ったからです。どういう機能があったら便利か、実際のユーザーニーズに応えながらロジザードZEROとの連携に寄せていくにはどうしたらいいか、東京と秋田間でイメージの共有から製品に落としこむことに挑戦しました。また、ロジザードZEROのユーザーインターフェイスは古い(笑)という声をお客様からいただいていましたので、デザインも最近のトレンドを意識しました。

佐藤: 従来とはまったく違うやり方ですので、開発プロセスも変わりました。まずはひとつ形にして、そこから細かな仕様を話し合いながら固めていくやり方で、アジャイルで開発を進めてはフィードバックの繰り返しです。作る→見せる→フィードバックを繰り返しながら、だんだん完成形に近づいていきました。
それから、ZEROはクラウド環境で構築しましたが、ロジザードZERO-STOREはAWS上で開発しました。実はこれも大きなチャレンジでした。

橋本: 「統合的に在庫をとらえていこう」という視点から、最初はロジザードZERO上でまとめることも考えたのですが、AWS上でできる優位性とロジザードZEROのクラウド上にまとめる優位性を比較検討した時、AWS上で構築した方が望む成果を上げやすい、優位性が高いと判断し、挑戦することに決めました。

佐藤: オープン環境の中で新しいやり方を模索しながらの開発になりました。苦労しましたが、AWS上での開発に関しても土台を作れたのではないかと思っています。

橋本: スタート時に実は1社見込客がありました。そこで、退路を断つべく、お客様への納品日を先に決めてしまいました。納期を決めることで、開発もデッドラインが見えて、そこに向けてスケジュールを組むようになります。初めてのやり方にもかかわらず、かなり厳しいデッドラインを設定しましたが、開発チームはきっちり期待に応えてくれました。

佐藤: 理想を追求すればキリがありません。お客様への納期というデッドラインが決まっているので、本当に必要なこと、確実にやるべきものを洗い出し、優先順位を付けて開発を進めました。東京にヒアリングしてはアジャイルでたたき台を作り、フィードバックをもらっては修正するという流れで突き進み、なんとか完成形に仕上げました(笑)。

橋本: 最初の認識合わせは重要なので、対面で打ち合わせます。大切なところは顔を見て話をするのは鉄則ですね。

佐藤: 東京チームとは、スカイプ、チャット、バックログなどを使ってやりとりをしています。クラウドの利用で、プロジェクト管理ツールも多彩になり、資材管理や課題管理も容易になりましたから、東京との距離をあまり感じずに仕事ができていますね。


既存のお客様の満足度を高め、新規ユーザーのニーズに応えるバランス感覚

現場の声に応えていくというプロセスは、ZEROの開発と同じですね

橋本: そうですね。今は、稼働しながら(走りながら)チューンナップしています。最低限求められていたラインはクリアして、実際にお客様に使っていただいていますが、お客様からの要望はまだまだあります。今後は、販売分析などの機能拡張を進めていきます。ロジザードZERO-STOREはレジ機能を持ちませんから、外部レジとの連携が必要です。レジからロジザードZERO-STOREがデータを収集し、吸いあげた情報を分析・可視化する機能を期待されている。この部分は、これから肉付けしていきます。

佐藤: 期待やプレッシャーはありますが、私たちのサービスはすべてお客様に磨かれて活用されているので、やりがいがあります。

橋本: ZARAやGAPなどのメジャーな企業は、店舗用の在庫管理システムを自前で持てますが、中・小規模のアパレルメーカーは、システム開発にそこまでコストをかけられません。そのために、バックヤードと店頭の在庫管理が非常にアバウトな状況であることが多いのです。当社ではそうしたレンジのお客様に導入しやすいサービスを展開しています。既存のお客様の満足はもちろんですが、新規のお客様のニーズに応えることも大切。そのバランスも重要だと考えています。

佐藤: 物流におけるIT化というと、倉庫内のロボティクスやIoT、配送での追跡などがイメージされやすいのですが、在庫の重要性が注目されてきていて、当社のサービスへのニーズはますます高まっていくのではないでしょうか。

橋本: 今はアパレルメーカーもいろいろな形態で事業を行っています。実店舗を持たずにECを中心に展開し、イベントやポップアップショップなどリアルの場は催事的な運営で、しかもリアルの場では注文を取れるだけ、出荷は倉庫から行うなど、いろいろなやり方で商売をされています。

佐藤: そういう手法のメーカーこそ、全在庫を見える化しなければならないと思います。システム開発にお金はかけられない規模の企業でも、その課題を解決できるツールがZERO-STOREです。スマホの浸透で、アプリで対応できるようになったことも大きいです。利用しやすい環境にありますから、どんどん利用してほしいですね。

ロジザードZEROとの連携でお客様の生産性向上を!

ロジザードZERO-STOREの一番の特長は何でしょうか?

橋本: 知見豊富な在庫情報管理・活用のプロが開発した、唯一無二のシステムである点です。店舗専用のシステムですが、ロジザードZEROとシームレスに連携できるという点が、一番の特長です。POSレジのオプション機能に一部持っている製品もありますが、今までにない仕組みで構成されていて、クラウド店舗在庫管理システムとしては、競合製品も現時点ではありません。ロジザードZERO-STOREそのものはレジ機能を持ちませんが、ソフトバンクの「クラウドPOS」というPOSレジとの連携が可能です。
店舗というのは、在庫の管理がしにくい場所です。ところが、在庫情報は会計的な側面からも経営的な側面からも、会社側が絶対に必要とする情報でもあります。棚卸しをするまで、自分たちの資産がどこにどれだけあるかが把握できないのは非常にまずいわけで、会社として把握しなければならない大切なデータです。すでにWMSは使っているけれど、店舗在庫の管理は不十分。ここをしっかりやりたい、別システムとつなげたい、いろいろな組み合わせの中で店舗在庫管理システムの機能を使いたい、というお客様に、ロジザードZERO-STOREは役立ちます。

佐藤: ロジザードZEROとシームレスに連携できることはウリのひとつですが、他のWMSともカスタマイズでつなげますから、ロジザードZEROのユーザーであってもなくても、メリットはあります。ニーズが大きいのは店舗用だと思いますが、先ほど話に出たイベントやポップアップストアなどの展開をする企業も、便利に使ってもらえると思います。

橋本: 既存のロジザードZEROユーザーなど身近なところから導入し、声を聞きながら使いやすさの追求や機能拡張など、ブラッシュアップを続けていきます。

導入されたお客様からの反応はいかがですか?

橋本: 今回の開発では、スマホアプリのトレンドを押さえたデザインを意識したのですが、画面のデザインが直感的で使いやすいと好評で、ホッとしました。開発メンバーには、自分がユーザーの立場で見ることを忘れないように、ユーザー目線で開発してほしいと、常に話しています。

佐藤: ロジザードZEROの開発時には、スマホで見るような環境はまだありませんでした。世の中は変わってきているので、スマホやPC、タブレットのいずれでも使えるようなユーザーインターフェイスにしました。自分のスマホで動かしてみて使いやすいか、どう感じるかも気にして開発しています。

今後の展開について教えてください

橋本: リリースしたばかりの新しい製品ですので、現在のユーザーを中心に、機能への要望がたくさん出てくるだろうと思います。まずは現場で使うユーザーのリアルな声に対応するのが、先決です。ロジザードZEROのお客様にも使っていただき、声を聞いて、在庫を全体でとらえるというテーマがきちんと製品に反映されるよう、ブラッシュアップに努めます。
まだ検討段階ですが、RFIDへの対応を充実化させたいと思っています。RFIDに関しては、すでに約20年前から棚卸しの効率化などへの期待が高かったにもかかわらず、価格が下がらずに普及に至っていませんでした。最近になってようやく価格が下がり、ユニクロなど大手アパレルが導入し始めたことで、一気に普及が進むでしょう。私たちも、ロジザードZERO-STOREにRFID対応を付加していきたいと考えています。
機能拡張はもちろん、お客様の声を反映してブラッシュアップを重ねて、オムニチャネル化で在庫の扱いに悩まれている特に中小企業の皆様の力になりたいと考えています。


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