掲載・更新日:2019.07.04

2012年、当社の主軸商品であるクラウドWMS ロジザードZEROが誕生しました。物流倉庫で使う在庫管理システムとして、その使いやすさ、導入のしやすさから、今では1,000現場以上のお客様の物流現場に採用され、WMSでは圧倒的なシェアを獲得しています。急成長するEC市場と歩調を合わせ、ロジザードZEROも成長を続けてきました。成長の軌跡とその裏に隠された開発秘話、そして今後目指そうとしている方向性や未来展望について、ロジザードZEROの誕生からかかわる当社の開発メンバーに話を聞きました。

主軸商品である『ロジザードZERO』とは?

お2人ともロジザードとのかかわりは長いですね。

システム統括部東京開発部 部長 福田章宏(以下、福田)

私が入社したのは2005年ですが、実際は2001年頃から、当時はまだ有限会社だったロジザードの外部の協力スタッフとして、ロジザードの仕事にかかわっていました。ロジザードの原点で、ロジザードZEROの前身である「ロジザードPlus」をリリースする1年前くらいから、現会長の遠藤と仕事をしていたのです。会長もその当時は営業兼SE的な立場で、「ASP型のWMSが来る!」と開発に意欲的なときでした。私は会長から仕様を聞いて開発するメンバーの一人で、ありがたいことに見こまれて、仕込まれて、そしてロジザードに呼んでもらいました。

システム統括部東京開発部 佐藤元紀(以下、佐藤)

私は2009年の入社です。前職もエンジニアで、今は横手にある開発センターで製品開発に携わっています。ちょうどロジザードPlusの機能強化が急務とされているときで、その流れからロジザードZEROの開発に最初からかかわりました。

その主軸商品である『ロジザードZERO』について、簡単にご紹介ください。

佐藤: 3PLをターゲットにしたクラウド型WMS、倉庫管理システムです。EC市場が活況となり、1日数十件から数千件の出荷をこなす物流現場では、いまや在庫管理システム無しでは機能しなくなっています。ロジザードZEROは、特に通販と卸の両方の業務がある物流現場に、誤出荷ゼロ・在庫差異ゼロ・導入支援ゼロで開始できるWMSとして開発しました。

福田: クラウド型WMSのパイオニアであるロジザードには、さまざまな商材の在庫管理ノウハウがあり、導入する約8割の企業様がノンカスタマイズでスタートできるほど、お客様目線での機能があります。高いコストパフォーマンス、幅広い業態の荷主を管理し得る柔軟性、導入までのスピード感、365日電話対応可能なサポート、1社1社導入支援を行う「サービス会社」としての姿勢などが評価されて、主に紹介・口コミを中心に実績を伸ばしてきました。1,000現場以上に導入されており、WMS業界ではトップシェアです。前身となるPlus時代から約20年間、継続してご利用いただいているお客様もいらっしゃいます。

「ロジザードPlus」から「ロジザードZERO」へ どのような課題感から開発に着手されたのでしょうか?

福田: ロジザードPlus はもともとアパレルメーカーをターゲットに、 B to B向けに開発されたWMSで、インターネットでソフトウェアをレンタルするASPという方式で提供していました。ところが、当時はまだインターネットを通じて業務システムを使うという概念が珍しく、思うように企業に導入できずに苦戦していました。一方で、世の中では楽天やYahoo、Amazonがインターネット上でショッピングサイトを運営し、インターネットを使った通販=ECコマースが注目されるようになります。当社にもECサイト用のWMSの相談が舞い込み、ロジザードPlusをベースに対応できるよう機能拡張をしていきました。業種、出荷形態がまったく異なり、物のとらえ方考え方が違っていたので、慣れるまではとても大変でしたが、お客様からのリクエストに応えて機能を次々に開発しました。でもそこに限界が見えてきたのです。

佐藤: この時期、仮想化技術を含めてインターネットを活用する技術革新のスピードがものすごくて、技術そのものをバージョンアップする必要性が出てきたわけです。

福田: 古い技術から新しい技術への転換ですね。ロジザードPlusは1つのIDに対して1つの処理対応でしたので、ひとつの倉庫会社が複数の荷主に対応したいと思うと、どんなに機能を拡張しても古い技術では限界がありました。今では当たり前にできることも、10年前にはできなかったことがほとんどです。ロジザードPlusからロジザードZEROへのバージョンアップの検討は、リリースの3~4年前から始めましたが、WMSも現場も知っているがゆえにやりたいことがたくさんありすぎる!でも注力する時間が確保できない!というジレンマを抱えながら時間ばかり過ぎていきました。

佐藤: 私が入社したのは会社がそんな風に悶々としているタイミングで、ロジザードZERO開発の最初から携わりました。思い返すと、当時会社にとってロジザードZEROの開発は大博打だったと思います。ロジザードPlusのユーザー数もまだそれほど多くなかった中で、14~15名ほどのエンジニアがかかわるなど、あの頃の当社としては莫大な開発費をかけたのですから。いきなり大プレッシャーでした!

福田: 彼がロジザードZEROの基盤を、ほとんどすべて作ったといっても過言ではありません。

佐藤: ロジザードPlusから引き継いだ仕様もありますが、基盤はまったく新しく開発しました。

福田: ロジザードの良さは何といっても「現場目線」のサービスです。まず、あるお客様用にプロトタイプを作り、その後ロジザードZEROの開発の本格的に取り組みました。

佐藤: そのお客様のリクエストが多かったこともあり(笑)、多機能でカスタマイズ領域が広いこと、お客様自身でカスタマイズができることがロジザードZEROの大きな特長となりました。もともとロジザードPlusでお客様からカスタマイズの要望が多く、エンジニアの負荷が高くなったことも課題のひとつでした。だから、ロジザードZEROはお客様自身でカスタマイズしてもらおうと考えたのです。そのパターンをいろいろ考えましたが、開発テストも膨大で大変でした。

福田: いかなる環境でどういう使い方でもできるようにしよう、というのが開発の肝でした。マルチブラウザ、PDF印刷を可能にするなど、誰もがどのような環境でも使えるようにしたのがロジザードZEROです。ロジザードPlusでカスタマイズしているときは、お客様からのリクエストに応える1機能を作っている意識しかありませんでしたが、振り返るとこうした機能強化の部分がロジザードZEROのコアとなっていました。2011年5月に設計を開始し2012年9月にリリースと、開発期間は約1年半でしたね。


初期運用時のトラブルで、社内がひとつに

今は圧倒的シェアを誇るロジザードZEROですが、スタート時の評価はどうでしたか?

福田: うーん。最初の2年くらいは大変でしたね。どんな製品も避けられないことですが、初期にはいわゆるバグが多くて、トラブルがありました。お客様から「どうなっているんだ」と連日厳しい声をいただいていました。

佐藤: システムが止まるなどの声があがり、ユーザー数が増えるに従って状況が悪化していきましたね。

福田: 負荷も考慮してテストしていたのですが、ユーザー数が増えて使い方も多岐にわたり、サーバが追いつかなくなってしまったのです。「遅い」「動かない」とガンガン電話がかかって来て、遅いところに負荷がかかるからさらに遅くなる。対応をしてもしても追いつかない中で、とにかくチューニングを重ねました。Ver1.7までは、リリースから2~3年間は毎日悪戦苦闘していましたね。でも、お客様の方も忍耐強くて(笑)。重い、遅いといったことで叱りはしますが、契約は止めずにずっと使い続けてくださり、それが私たちの支えになりました。この当時に経験した多くのことが、ノウハウの蓄積になって今に活きています。

佐藤: ロジザードの強みは、トラブル時にSE、営業も含めて、全社一丸となってお客様のカバーに入ること。普通だったら、営業と開発で険悪な状態になってもおかしくないシーンでも、そうならないのです。「出荷絶対」のスローガンで全社員がひとつにまとまります。

お客様の物流を止めない=「出荷絶対」のポリシーですね

福田: 「出荷絶対」はロジザード設立時から社長のポリシーとしてあるもので、これが当社の事業の基礎・基準です。それが社員にも浸透しています。

佐藤: お客様の出荷を、仕事を止めてはいけない!という意識が、企業文化としてあります。全員が、「たとえシステムが止まっても、手作業ででもなんとかするぞ!」という気概でまとまり、ピンチのときを幾度となく乗り越えてきました。

福田: 初期のお客様が厳しくて、鍛えられました。お客様は、それまで契約倉庫さんが使われていたWMSを利用されていて、自社での導入は初めてだったのです。こちらも初めてでどぎまぎすることが多く、カスタマイズなどの要件に対応するのも必死でした。初期はかなり遅いシステムで怒られまくりましたが、必死に食らいついたからこそ今があると思います。

佐藤: そうですね。最初から多機能を望まれて大変だった想い出深い案件です。ずいぶん怒られましたけれど、今でも継続して使っていただいています。ありがたいお客様です。

福田: 初期のバグによる障害などいろいろなトラブルを経て、安定稼働までに多くのノウハウを蓄積しました。営業、導入、サポート社員全員が経験値を積み、カスタマイズも安定して、進化したのが今のロジザードZERO。まさにお客様に育てていただいた製品です。現在、多くのお客様に安心して使っていただけている背景には、こうした歴史もあったということです。


ロジザードZEROは新たな価値を生み出す源泉

お客様からの厳しい要求が、ロジザードZEROを信頼あるブランドに育てたのですね。では、あらためてその価値とは何でしょうか?

福田: ロジザードZEROは当社の基幹となる製品です。ロジザードZEROを中心に他のすべてのサービスが派生して、開発、展開されていますから、新たな価値を生み出す源泉といえますね。

佐藤: 物流の中でも、倉庫関連の業務はコスト部門といわれていて、どこの企業でもあまり大きな予算を投じません。でも、その中で奮闘している人たちがたくさんいて、日々業務効率や生産性を考えて現場の改善に努めています。WMSは業務改善に大きな効果があります。高額になりがちなパッケージ製品に比べてはるかに導入しやすいのが、ロジザードZEROです。まずは使ってみて試してみてください、といえるのが強みですね。使っていただければ、なにしろ「出荷絶対」精神のバックアップがありますから、安心して使い続けていただける、業務改善に貢献できると思います。信頼を裏切らない姿勢、日々の行動の蓄積が、結果として製品だけでなくロジザードという会社そのものの価値となっていると思います。

福田: 「つなげる」という価値もあります。今もAPIを通じて他社製品やシステムなどと連携できる仕様ですが、将来的にはもっともっと「つなぎやすいツール」にしていきたいという思いがあります。

佐藤: 倉庫が進化していますから、倉庫内のIoT・ロボット化やRFID端末、WEB APIとつなげていくのも必須です。

福田: 在庫情報は、いろいろなシステムの基盤になりやすいデータで、つなげたいという要望は常にあります。在庫情報は、さまざまな分析の基礎情報になり得るからです。

佐藤: 在庫という言葉にもいろいろな意味合いがあって、販売系システムでいう在庫と私たちが使う在庫では、少し意味が違ってきます。販売系システムが指す「在庫データ」は、計算上の数値である場合がほとんどですが、ロジザードの在庫情報は、実際に倉庫にある「モノ」と数が一致していることが原則です。机上の数値で導かれた「在庫データ」には、壊れて使えないもの、商品としてみなされていないものも含まれています。今現在の「本当の在庫数」が欲しいときに、ロジザードZEROとのAPI連携への要望、期待は大きいのです。初期から他の基幹システムとの連携の要望はあり、都度カスタマイズで対応してきたので、経験値は豊富にあります。

福田: 在庫を物理的な「モノ」としてとらえるだけでなく、会社の売上を左右する大きなファクターとして注目する動きが出てきました。そこが適当な管理だとまずいよね?という問いかけの中で、まず今ある在庫を見える化していく役割がロジザードZEROです。手軽に導入できる、自社の他のシステムやIoT端末ともつなげるAPIも準備されている。これがロジザードZEROの最大の価値だと思っています。

既存のロジザードZEROユーザーに対して、今後どのような付加価値、展開を考えていらっしゃいますか?

福田: やはり「つなげる」という面で、もっと役に立つものを提供したいと考えています。「ロジザードOCE(オムニチャネルエンジン)」のWEB APIもそのひとつです。

佐藤: 倉庫の在庫管理だけでなく、倉庫と店舗をつなぐコンシェルジュ的な役割を担うものです。注文が入ったときに、「倉庫から出す」か「店舗から出す」か、2つの指示系統がありますが、ロジザードOCEはこれを整理して、適切な出荷指示を出すエンジンです。

在庫を統合していこうという考え方の中で開発されたエンジンですね

佐藤: 在庫をキーワードに事業拡大を考えていくと、さまざまな場所にある在庫をどうやって見える化するか、どうやってそれらを統合して効率的に運用するか、ということに行き着きます。こうしたAPI拡張のためのフレームワーク作りで、ロジザードZEROの付加価値を高めていきたいと考えています。

福田: APIについては、今は、ZERO本体の方で私たちが用意するAPI連携しかできませんが、ZEROを基軸に、お客様からの要望に応えるためのサービスの一環として、今後はお客様が独自に準備したAPIで拡張できるようにするためのフレーム作りも考えています。

佐藤: 新サービスの開発は、中国の影響も大きいと思います。当社は中国に子会社を持ち、ロジザードZEROを中国でも拡販しています。その関係で、会長、社長はたびたび中国に出向き、その都度、中国のITの進化を目の当たりにして帰ってきます。日本では古いシステムがいまだに動いていて、その呪縛からなかなか解き放たれないところがあります。しかし、ITに関して中国はもともとそうした仕組みがありません。常に新しいものがどんどん生まれて、取り入れられます。中国の深セン、上海のスケールと進化の早さはすごいですよ。


1日23万件の波動に耐え得る処理能力

中国にもロジザードZEROが導入されていますが、大きな波動がある「独身の日」にも耐え得る性能だったと聞きました

福田: 中国の「独身の日」は特別です。もともとは、中国最大のインターネットショッピングサイトが2009年11月11日に始めた独身者向けのセールがきっかけです。その後、京東(ジンドン)などの他のECサイトもこれに乗り、毎年11月11日は独身者に限らず多くの人がネットショップのセールに殺到するという一大イベントになりました。2018年の独身の日には、アリババの取引額が過去最高の約3.5兆円を記録したと報道され、話題になりました。当社が導入しているZEROでも1日で23万件という波動に対応しました。日本ではそれほどの波動はありません。1日に3,000件の処理で「わりと多いな」と感じる量です。独身の日の23万件はその70倍ですから、すさまじいです。

佐藤: ZEROは中国市場でかなり鍛えられていますね。中国では倉庫のロボット化も進んでいますし、さまざまなシステム、アイテムとの連携にも挑戦できます。日本ではなかなかできないようなことにもトライでき、そこで得た知見は製品の改善に活かされています。

ロジザードは物流系の会社ですが、システム開発に注力できる環境があります。

佐藤: 開発部門は秋田市と横手市の2拠点あり、それぞれ5名ずつメンバーが常駐しています。東京とは離れていることから、喧騒や雑音から離れて、システム開発に注力できる環境です。距離が離れていても仕事を進めるのに特に苦労はありません。最近はプロジェクト管理ツールなども充実していますので、コミュニケーション上も問題ないと思います。逆に、離れた場所にあることがプラスに働いたこともありましたね。

福田: 社内では「7.18事件」と呼んでいるのですが、サーバ全体がまる1日止まってしまうという大事件が起きたときは、とにかくクレームや問い合わせの電話の嵐で、東京事業所はパニック状態に陥りました。

佐藤: 何らかの障害が発生して、インポート機能でサーバがパンク状態になったのです。「出荷絶対」を標榜する当社にとってサーバが止まるというのは大事件で、当然会社全体が混乱しました。そのような中で、秋田の開発部門は、東京のパニックに巻き込まれず冷静に対応することができました。とにかく原因究明に集中できたことで、早い段階でバグを発見し、修正プログラムで対応できたのです。

福田: お客様への被害を最小限に食い止められたと思います。もし自社にシステム部門がなかったら、離れた場所で冷静に対応できなかったなら、もっと大変なことになったでしょう。


自社製品を自ら開発し育てられる醍醐味

自社製品を開発できる環境については、どのように思っていらっしゃいますか?

福田: 受託開発とは大きく違います。自分たちの製品を外部に委託するのではなく自ら開発して、責任を持ってずっと育てていける喜びはあります。時代の風を読みながら、テクノロジーの進化に合わせてどんな風にも育てていける、軌道修正も自分たちで行えます。愛着が生まれますよね。自社ブランド、製品があるからこそ、自分たちのアイディアを形にできる楽しさがあります。

佐藤: 物流業課は今、間違いなく大きな変革期にあると思います。社会情勢を見て先手を打てること、必要とされるものを作っていけるダイナミクスさが、物流システム会社ロジザードの強みだと思います。技術的な専門スタッフと営業との距離が近いのも特長で、トラブル時は「出荷絶対」精神でガチっと社内が固まる。状況や課題感の共有が早いですから、そこでシナジーのようなものが生まれ、新たなアイディアが出ることを幾度も体験しました。

福田: ECも、変化のスピードが速くなっています。その中で、最近は「届ける」ことに価値を置くという動き、いかに早く届けるかといったことを、在庫情報から読み取る動きが出てきています。

佐藤: たくさんの倉庫情報、在庫情報は、ある意味特殊なビッグデータです。今後は、例えば、トラック配置の最適化や宅配天気予報など、ロジザードだからこそ提供できる価値を創造したいですね。

福田: 情報の活用にはいろいろ規制もあって、越えなければならない壁は大きいのですが、データを資産として活用して、物流の仕組みがもっと楽に効率的になるようなことを考えていくのが、私たちの役割だと思います。クラウド型のWMSも増えて来ましたが、パイオニアであるロジザードZEROの実績や経験値は他の追随を許しません。ありがたいことに、「クラウドWMSで実績のあるロジザードを使いたい」という新規のお客様も増えています。今後は連携を中心とした機能拡張に力を入れていくことでお客様へ価値を提供し、自らも成長を続けていきたいと思います。


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