在庫をキーファクターに、顧客のニーズやウォンツに寄り添い、経営改善に寄与する様々な施策を提案してきたロジザード株式会社 代表取締役社長 金澤茂則。中立的で特異な立ち位置から、ユニークなアイディアで業界に新風を吹かせ続ける金澤が、自身のこれまでの歩みとロジザードが大切にする「価値」を語る。


スタートはアパレル企業のバックオフィス業務

私は元々アパレル企業にいて、バックオフィス業務を主に担当していました。最後に手掛けたのが、アウトレット企画、つまり在庫をどうさばくかという企画で、全体のスキームを考えました。在庫に売れる値段をつけていくのですが、データからは商品が判断できず、実際に見るために毎日のように物流倉庫に通いました。楽天市場がようやく立ち上がったかな、という時期で、商品画像が記録されることは少なかった時代ですから、とにかく倉庫まで行って現物を見るしかない。物流倉庫に通って「在庫」から業務の流れを見ているうちに、在庫という存在の重要性に気付きました。

放っておけばとてつもない金額の不動在庫となるものを、結果的に5億円くらいのキャッシュに換えたのです。店舗展開を積極的に進めていた当時、契約には保証金が必要で、銀行借り入れで賄っていくのが通常のやり方でした。店舗を出せば出すほど、頑張れば頑張るほど、借金が膨らみ金利負担が大きくなるという状況です。もしキャッシュで5億あれば、数十店舗分の保証金に充てられます。在庫を回してキャッシュ化すれば出店が加速できる、つまりキャッシュフローに、在庫管理が強烈に効くとわかったのです。

物販業の場合キャッシュフローを上げるには、仕入れから次の支払期限までに売りきるのが一番です。基本はそれしかありません。とはいえ、それが難しいのが現実で、いろいろな手段を講じて在庫を適正化していく必要があります。アウトレットはその手段の1つですが、利益を伴って現金化できるのは投資した商品だけです。本来、在庫は売りきらなければなりません。


正確な在庫を知らずに経営するオーナーたち

在庫を回して現金化する、キャッシュフローを上げるというノウハウは誰かの役に立つのではないかと思い、アパレル企業向けのコンサルタントとして起業し、様々なアパレル会社に提案しに行きました。そこで衝撃的な事実に直面します。あるべき正しい在庫帳簿が、どの会社にもないのです。在庫情報が正確でないと僕のノウハウはまるで役に立ちません。挙げ句の果てに、社長からは「うちには不動在庫はないから」と言われる始末です。でも実際は、社長は倉庫に行かないから見えていないだけ。一緒に倉庫に行くと、商品がたんまり残っていることにみな驚愕されます。社長はいつも「数字」しか見ていません。だから、帳簿上利益が出ていれば安心してしまう。バランスシートを見れば、在庫がこれだけあってキャッシュはこれだけ、と気付くはずですが、大半の社長は損益上の利益が出ていれば在庫の中身がどうかなんて気にしません。その結果、利益はあれどもキャッシュがないために資金繰りに行き詰まり、倒産する例をずいぶん見ました。

正確な在庫を取る仕組みがどこにもない。これは問題だと思いましたが、声高に叫んでもWMSはパッケージでさえ平均2,000万円はかかる時代でした。導入意欲は低く、私がやりたいコンサルの前提がない状況です。正確な在庫情報には正確な入出庫が必要で、どうしたらその仕組みができるだろうとあちらこちらのソフト屋さんに相談している時に、偶然後輩と会い、自社でWMSを開発していると聞いてすぐに現会長である遠藤に会いに行きました。すると「WMSをインターネット経由で提供しようと思っている」と言われたのです。もう運命的ですね。遠藤はIT業界の深い知見を持っていたので、「この技術が出てきたら次はこうなる」という見通しがあって、WMSも価格が下がってみんなが使いやすくなると。当初は僕のコンサルの前提を作るためのツールとして、ロジザードを仕入れて販売するという形で2001年に会社を立ち上げました。その後、本格的にWMSサービスの販売へ事業の舵を切り、2005年に遠藤の会社と合弁する形でロジザード株式会社になりました。


eコマースに活路を見いだす

ロジザードは、元々大手のアパレル企業の物流システムとして開発されていました。そして僕もアパレル出身です。SKUの多い物流に対応する機能を備えていて、まさにアパレル向けのWMSでした。ASPなら導入コストが安価なので、多くの企業に好意的に受け入れられるだろうと思っていましたが、そううまく事は運ばずいろいろな理由で断られ続けました。当時はまだ企業でインターネット環境が整っていたところは少なく、ブロードバンドの普及もまだまだで、インターネットを通じて業務システムを活用することへの理解が全く進まなかった。「理屈はわかるが現実的ではない」という評価が大勢で、しかも我々はベンチャー企業、信用も低かったのです。

ある時、大手ポータルサイトで急激に売り上げを伸ばしている会社が、出荷が追い付かずに困っている、3カ月でWMSを入れられる会社を探しているという話が来ました。WMSの導入は、通常、最低でも半年から1年単位のプロジェクトです。ところがロジザードは、インターネットにつなげばその日から使えます。通販系の経験はなかったのですが、必要な機能を入れてやってみようということになりました。通販のフローに合わせて機能を追加するなどカスタマイズして、短期間で無事に稼働できたのです。

そしてこれがまた偶然なことに、その倉庫に大手運送会社が集荷に来ていました。当時その運送会社はある大手のEC物流の受託案件を進めていたのですが、システム構築を担当するベンダーが運営開始直前に辞退してしまって、大急ぎで代わりを探していたらしいのです。「あの倉庫が最近新しいシステムを短期間で入れたみたいだ」と情報が流れ、当社に声がかかりました。ローンチが迫る中6日で稼働を果たし、初出荷に間に合わせることができました。その時、新たなマーケットが見えたのです。eコマースはこういうことなのか、そこへ物流を提供する3PL業とはこういうことか、僕らの持っている価値はここで生きるのか、と。eコマースの人たちは、インターネット上のサービスを使うことに抵抗がありません。僕らはたまたまインターネット経由で使えるWMSを持っていたので、ECマーケットの仲間に入れたような感じでした。
並行して、EC企業同士の会合などを通じて、「ロジザードというWMSがあるらしい」と情報が口コミで拡がっていきました。「ロジザードなら来月から稼働できますよね」などと、お客様の方から話が来るようになり、やっと会社として息ができるようになったのです。


コスト競争ではなく価値で他を凌駕する

EC業界には顕著なニーズが2つありました。1つはスピード感です。ECの成長期が到来すると、売り上げを来年は倍、再来年は10倍、3年後には1000億にする、などすごいビジネスイメージを持つ人たちが参入してきました。1年後に入るWMSなど必要ないとばかりに、スピード感のない製品群は自動的に排除されて、ロジザードのバリューが自動的に上がっていきました。

もう1つ、これらの物流を引き受ける3PL業では、「今すぐ始められて、必要がなくなったらすぐに止められる仕組みが欲しい」というニーズがありました。何千万も投資したシステムが、半年後に契約企業の契約が切れて不要になったら残りの費用償却はどうなるのか、という話です。通販を請け負うことになると、誤出荷、誤配送は致命的です。多くの物流会社が倉庫管理システムを持っておらず、参入するからにはWMSの導入は必須でした。早く導入できて投資リスクが少ない。ロジザードのサービスは物流会社にとってメリットがあったということでしょう。楽天市場の初期の時代から手掛けたこともあって、他社製品にはないEC物流のフローを持っていたことも強みとなり、EC物流はロジザードという流れができたのだと思います。

インターネットの世界は進化が早く、WMSをSaaSで提供する競合も増えていますが、そこでコスト競争にならないよう、違う価値で選ばれるように努力しています。激しくテクノロジーが進化していく中で、お客様は日々の運用サポートが一番欲しい、あれば助かります。その声に応え続けることにバリューがあると考えています。お客様は、自分たちの物流を止めないように尽くしてくれるパートナーを求めています。僕らのポリシーは、「出荷絶対」。何か問題が生じてもその日に必ず解決するように対応すること。その点が、評価されているのだろうと思います。去年、初めてお正月に休ませてもらいましたが、僕自身、16年間元旦にはカスタマーサポートを行っていました。今でも、11月に上海で行われる大型ECイベントのサポートチームメンバーに入っています(笑)

季節商品やスーパーセールなどでの業務量の波動も来ますから、そのコントロールも重要です。お客様は意識されないと思いますが。我々は、先々のスケジュールを確認しながら、調整して乗り切ります。物流は必ずフィジカルな側面にぶつかります。システムだけでは完結しないので、そこはお客様とリレーションをとっていく努力を続けています。お客様の物流を止めないのがロジザードのバリューですから、「そのためにロジザードを使う」という動機で導入していただくことを目指しています。


システムを超えサービスを提供する

ECは、商品を作る会社、販売する会社、そのプラットフォームを提供する会社、届ける会社、様々な異なる会社が複合的に関わり、それぞれ違う立場、ポジショニングで仕事をしていますが、購入者はそんなことは考えません。ECでは「購入者の望むタイミングで届ける」必要がありますから、未出荷・誤出荷などあってはならない。ロジザードでやっていれば出荷は大丈夫、という安心感で使い続けていただくことが、我々の使命であり、そこまでやりきるノウハウを持っているのが当社だと自負しています。

現在の大型セミナーの始まりとなる寺子屋

また、常に業界トレンドに対するアンテナが立っていますから、発信力が高いことも当社のバリューといえます。当社のお客様が、さらにその先のお客様に提案できるような情報、提案力、ソリューション力を持っていただこうという思いで、情報を収集し提供しています。おかげさまで、当社が企画するセミナーには毎回本当に多くの方が足を運ばれます。集客力に驚かれることもたびたびですが、元々は遠藤が「寺子屋」形式に始めたミニセミナーがベースになっていて、勉強したいという意欲のあるお客様に、実のある情報を提供しようと企画しています。当社の製品の話はほとんどしていません(笑)。 お客様の物流を止めないこと、拡大を支援すること、常にそれを意識して、物流が活気ある業界になるよう、これからも努力していきます。