掲載・更新日:2018.07.30

物販サービスの多様化に、物流が追いつかない状況が続いています。「宅配クライシス」とも呼ばれる課題の一因に挙げられるのが、再配達問題。日本郵便が2019年春から「置き配」を本格的に始めることを発表するなど、各事業者が様々な策を講じているものの、再配達解消の決め手はいまだにありません。この悩ましい課題に、スタートアップ企業として果敢に取り組んでいるのが、Yper(イーパー)株式会社です。「再配達を無くしたい」という思いから生まれた、新発想の置き配バッグ『OKIPPA(オキッパ)』は、2018年4月からクラウドファンディングで2,000個以上が先行販売されるなど、その動きが注目されています。弊社執行役員の亀田が、Yper代表取締役の内山智晴氏を訪ね、再配達問題とOKIPPAについてお話を伺いました。

再配達を無くし、物流業界ならではの課題に風穴を開けたい

亀田: はじめに御社の事業について簡単にご紹介ください。

内山: 現在行っているのは、物流のいわゆるラストマイルでの再配達を無くそうという取り組みです。従来の宅配ロッカーに代わるOKIPPAという置き配用バッグを開発しました。これを玄関などに吊り下げて荷物を確実に受け取ることで、再配達を無くそうという試みです。このバッグは、コストを抑えるためにIoT化していません。配送会社が提供する配送状況を自動的にトラッキングするシステムを活用したアプリと連動させることで、配送完了処理が自動的に通知される仕組みです。

亀田: 事業のメインは、OKIPPAの販売ですか?

内山: いえ、違います。まずは普及が一義と考えているので、バッグはほとんど原価に近い金額で提供していますし、連動するアプリも無料で提供します。ここからの利益は考えていません。では事業として何をやりたいかということですが、OKIPPAが普及すれば再配達が無い配送サービスができます。再配達が無ければ、配送コストを低く抑えた配送網を作りだせる可能性があります。現状の配送網の中で、OKIPPAを使ったマネタイズは難しい。そうではなくて、例えば「OKIPPA便」のような専用の配送網を配送サービスの一つの選択肢として提供することを、ビジネスモデルの一つとして検討しています。

亀田: 一つの配達インフラを新たに作るイメージですね。

内山: そうですね。再配達を無くせば、配送時間と配達員の適切なマッチングも可能になり、人手不足の解消にもつながると考えています。今、再配達率が最も高くなる時間帯が日中です。すると在宅の可能性が高い「早朝から10時頃」までと「午後5時から夜」までが配送のピークになり、配達員に負荷がかかります。長時間労働で体力仕事となれば働き手も不足しますが、再配達が無いなら日中の時間帯でOKです。OKIPPA便なら配達できる、という人が現れて、業界の人手不足解消に一役買えるかもしれません。

亀田: 再配達がともかくネックですね。

内山: そう思います。OKIPPA便構想では再配達を無くすだけでなく、配達員のストレスも軽減できると考えています。実は配送員の方々にお話を聞くと、対面がストレスになっている人が少なくありません。顔を合わせた時に何か言われたり、時間指定が守れず謝ったりというストレスが積み重なると精神的なダメージになり、だんだんつらくなってくるといいます。体力よりもメンタル面がきついという人もいます。OKIPPA便を構築できれば、対面せずに荷物を届けられますので、こうしたストレスも回避できるようになるのではないかと考えています。


素晴らしい日本の物流システム、なのになぜ再配達問題が解決できないの?

亀田: 内山社長が商社から独立して起業された理由と、なぜスタートアップに再配達問題を手掛けられたのか、伺えますか?

内山: 前職は伊藤忠商事株式会社で、航空機の機体や装備品の販売、改修を担当していました。仕事で半年ほどフランスにいたのですが、フランスの物流は日本の80~90年代のような状況で、不在で荷物が受け取れなかったら郵便局に取りに行くのが主流です。さらに出張に行く先々の国の物流を見て、日本の物流システムはすごく進んでいると感じました。一方で、再配達問題が浮き彫りになって久しいですが、大手配送業者、ECサイトやコンビニも含めて再配達問題に関わる人たちが、打開策を探って様々なチャレンジしているにもかかわらず、決め手となる解決法が見出せていません。これだけ考えつくされた高度なシステムが機能しながら、一向に解決しない問題がある。当事者が解決できないのなら、まったく物流と違う世界にいる自分たちがアイディアを出すことで変えられる可能性があるのではないかと思いました。さらに、物流は世界中にあります。日本だけではなく海外に展開できるという面でも、可能性を感じています。

亀田: 伊藤忠商事株式会社という大企業のバックボーンを利用してトライするのではなく、自身で会社を立ち上げようと思った理由は?

内山: 自分たちでやりたかったということに尽きます。スピード感が重要ですから、分野や規模感を考えた時に、組織の中で予算を取り、決められたプロセスを経なければならない環境では、チャレンジそのものが難しいと思いました。同時期にUberやAirb&bが急成長していましたが、成熟した既存のタクシー業界や宿泊業界がある中に新たな切り口で参入し、業界そのものが変わるような現象を起こしました。こうしたダイナミックなことをやってみたいという思いもあります。既存の物流業界でも同様に、新しいプレイヤーじゃないと仕掛けられないようなことをやりたい、スタートアップをやりたいという動機が大きかったです。

亀田: 強いモチベーションですね。社名をYper(イーパー)とされたのにはどのような意味があったのですか?

内山: 社名は「Hyper(ハイパー)」から来ています。Hyper=お客様から「これ最高だね!」と思っていただけるサービスを提供していこうという思いを込めました。Hyperをフランス語で読むとHを発音しませんから「イーペー」になるのですが、これを日本で読みやすいように「イーパー=Yper」に変えて、社名にしました。
ロゴは、グッドポーズを両手あわせてHを表し、その下にYPERを配して「Hyper」を示しています。やってみていただくとわかるのですが、両手で二つのGoodを合わせてキープするのはけっこうキツイです。気を抜くとすぐにBadになるので、緊張感を持って最高のサービスを世の中に出していこうという意思を表現しました。隠れた「H」をどう表そうかとあれこれ考えていた時に、このポーズがHに似ているなと思い付きました(笑)。

亀田: 再配達をテーマに動きだして、実際に苦労された面はどんなことでしたか?

内山: 最初は、IoTロッカーで始めようとしました。でもIoTのロッカーは、コンピュータ機器が組み込まれているため、1台300~400万円もします。スタートアップ企業が手を出すには高価すぎて、現状のIoTロッカーは即却下。コストを下げるためにクラウドをうまく使って、ロッカー自体はただの箱にしようとしました。そうすれば1台50万円以下で作れますから、これを自動販売機のように街中に置いて、スマホで開閉できる仕組みにしよう、と。しかし、問題がありました。誰もここにお金を払いたくないのです。

亀田: ロッカーを使って払う金額はどのくらいを想定していたのでしょうか?

内山: ロッカーの製造、メンテナンス、電気、土地代は絶対かかります。自動販売機や ATM と違って一日に何回転もしないので、一日1回転の稼働でコストを割り出すと、採算が取れるのが1回あたり最低でも130円でした。これを誰かからいただかなければ運用できないのですが、誰も払いたくないのです。配送主さんは払いません。ユーザも、よほど便利だと思えば払うかもしれませんが、難しいでしょう。なぜなら、今、再配達は無料ですし、コンビニ受け取りも無料です。痛みを感じていませんから、130円払うだけの価値を見出せるとは思えません。

亀田: ユーザにとってメリットが無いですね。タダで再配達してくれるのだからそれでいいじゃないかと。

内山: スタートアップとしてやるには難しい、と、最初から構想を考え直さなければなりませんでした。 また、そもそもこれまで物流に関わっていなかったので、肌で再配達の問題をとらえる必要があると思いました。そこで、現場を知ることから始めようと、大手配送業者で配達員として働かせてもらいました。繁忙期の約1カ月間、都内で実際に宅配しました。一般的に再配達率は約20%といわれますが、リアルに2割くらい再配達がありました。時間指定しているのにもかかわらず、不在というケースも多くありました。私は車が入れないエリアを担当していましたので、大きなリヤカーにエリアの荷物を入れて回るのですが、最初の家で水などの重い荷物を受け取ってもらえないと、エリアを回る間中ずっとその重い荷物を持ち歩かなければなりません。持ち帰って再配達するムダは積み重なれば大きなロスですし、配送員にとっては負担でしかなく誰も得しません。

亀田: 時間指定して約束しているはずなのに、それを守れない受け取り側のモラルも問われそうですね。配達員の長時間労働の一端を、受け取り側が作ってしまっている。受け取り側が例えば「置き配」を指示していれば、配達員の方の負担はずいぶん軽くなりそうです。再配達問題を、リアルに実体験として感じられたのですね

内山: この時には、ロッカーからもっと簡易な形、今のバッグの構想がありましたので、これが置かれていたら配達員の人はどれだけ楽になるだろうと実感しました。


置き配バッグOKIPPAの誕生。アプリ連動で、宅配ロッカー並みの機能を実現

亀田: OKIPPAの開発経緯について教えていただきたいのですが。これは、エコバッグのような形状で大きく拡がって、一瞬でたためるのがすごいですよね!

内山: はい、小さくたたまれていますが、プリーツ加工されているので、120サイズの段ボールが楽に入るくらいまで拡がります。横を持ってもらうと一瞬でシュパっとまっすぐになり、コンパクトに簡単にたためる仕組みです。ロッカーは難しいということで、改めてユーザ視点で考えました。ほとんどの人が家で受け取りたいという気持ちを持っています。ただ、ずっと家にはいられないし、荷物のために待ちたくない。

亀田: 自分は家にいないけれど、家で受け取りたい。

内山: 不在でも家で受け取りたいならば、「宅配ボックス」という選択肢がありますが、特に都心の戸建てやマンションなどは宅配ボックスを置くスペースが無い、規約で廊下にものを置けないなど、制約があります。一方で、生協さんなどは玄関前指定で置き配をしています。日本で定着している、玄関前で受け取る習慣を利用しようと思いました。ではその形状は? ボックス型ではなくて邪魔にならないもの、ある程度大きな箱が入り使わない時はたためるもの、おしゃれに置けるもの・・・と漠然としたイメージで探していて、ネットで偶然見つけたのが、株式会社マーナさんの大ヒット商品「Shupatto(シュパット)」というエコバッグでした。

亀田: え!? この商品の存在は知らずに? ネットで探してその出会いで決まったのですか?

内山: シュパットのことはそれまで知りませんでした。ネットで見つけてすぐに電話して、「とにかく1回話を聞いてください!」と半ば強引に伺ってお話しました。すると興味を持ってくださって。サンプル代をお支払いして作っていただいたのが、この第1号サンプルです。

内山: 止水ファスナーと防犯ロック、折りたたみやすいようにマジックテープを付けるなど、もともとのエコバッグに無い要素を加え、実際に使ってみて改良を重ねました。布バッグの発想は、置き配の盗難率が低い日本だからこそできたことです。ロッカーではコストがネックでした。仕組みを普及させるには低価格で数を出す必要があります。布バッグならそれが可能だと思いました。IoTロッカーがこんなところに来ました、という感じ。大きな進路変更ですね。


実証実験を通じて配達員の認知を高めたい

亀田: それにしても、配送管理を前提としたシステムからIoTを手放す発想はユニークです。

内山: アナログのバッグでも、既存のシステムと組み合わせたら、IoTロッカー並みの機能に仕上がることに気付いたのです。個人でも配送伝票番号で追跡、確認することができますよね。誰もがアクセスできるデータを、アプリが自動的に読みに行っています。トラッキングシステムも宅配ボックスもすでにあるものですが、これらを組み合わせたのがOKIPPAの試みです。

亀田:もともとあったエコバッグからヒントを得て、配達管理というわりとポピュラーな技術と組み合わせた。開発にお金や時間を使うのではなく、世の中に普及させるという軸をずらさずに工夫を重ねて製品化されたことに、感動を覚えます。

内山: 宅配バッグが高額だと、普及面で障害になります。とにかくできるだけ安く作って配りたい。利用者が増え、受け皿が増えることで再配達を無くしたいと考えました。そこでバッグはアナログですが、アプリと連動させて宅配ロッカー並みの機能を持たせたのが特徴です。

亀田: 2018年7月には、OKIPPAの実証実験を始められました。

内山: 実証実験の前に、私を含めて知り合いで協力してくれる人を募り、全国50カ所くらいで実際に使ってもらって情報を集めました。そこで得た意見をもとに改良したOKIPPAを使い、2018年7月7日から8月11日までの約1カ月間、東京23区の100世帯に協力を仰ぎ、最終的な実証実験を行っています。アプリの機能チェックも兼ねているのですが、弊社から毎週2,000円までの補助金を提供してネットで買い物をしてもらい、OKIPPAを利用してもらうこと、そして配達員の方々に認知してもらうことを目的としています。

亀田: 配達員の人に認知してもらう、ということも目的の一つにあるのですね。

内山: 4月からクラウドファンディングのMakuakeで、1900人弱の方に参加してもらっていて、2000個以上を販売し、9月中旬には出荷します。それまでにできるだけ配達員への認知を高めたい、「使えない」状況を無くしたいのです。

亀田: 9月中旬以降、全国でOKIPPAの利用が始まるのですね。使えないというのは、荷物を置いていってもらえないということですか?

内山: そうです。玄関先に吊り下げてあるものが置き配バッグだと配達員が知らない、気付かない、それで持ち帰ってしまうようなことは回避したいです。

亀田:配達員の方に気付いてもらうための施策は何か考えていますか?

内山: 配達員に周知するアプローチは簡単ではありません。玄関前に来てもらった時に、これが「置き配バッグ」であることに気付いてもらうことが一番効率的なので、当面はOKIPPAと一緒に利用方法を書いた小さなカードを下げてもらうようにします。それから、ECサイトで買い物をする際、住所を書く欄に「不在時は置き配バッグOKIPPA利用」と書いてもらうようお願いしています。住所に続けて書いてもらえば、自動で配送伝票に印字されるのを利用して。配達の際に「OKIPPA?」となっても、目の前にバッグとカードがあれば気付いてもらえます。配達員もできるだけ持ち帰りたくないですから、これが置き配バッグだとわかれば喜んで置いてくれるはず。一度認知されれば大丈夫です。関係各所への周知協力の依頼も、実証実験の結果が出た段階で積極的に展開していきます。

亀田:配達人にとってメリットの大きいサービスですし、配送会社にとっては働き方改革上も非常に有効だというアプローチであれば、十分コンセンサスを得られると思います。OKIPPAはユーザ側が用意するもので、配達員が拡販するものではないですし、デメリットは無いのですから、配送会社がもっと積極的に配達員に周知してほしいですね。

内山: 各ECサイトで配送を担当されている方々の業界で話をしたところ、OKIPPAの普及に賛同いただきました。今は、業界で誰もOKIPPAをご存じない状況ですが、紹介すると「これは配送効率が上がる、協力して広めましょう」と言っていただけます。twitterでは、配達員の方だろうと思われるアカウントがあり、リツイートしていただいたり、コメントをいただいたりしますので、SNSも利用していきたいです。


盗難の不安を払しょくする、OKIPPA保険

亀田: 拡販に向けての施策は、他にも考えていらっしゃいますか?

内山: 先般リリースしたばかりですが、置き配保険との連携です。東京海上日動と共同で、「OKIPPA盗難保険」を開発し、付保することができるようになりました。ユーザの置き配に対する不安の筆頭は、盗難です。安価で手軽でも盗難が不安で使えないのでは、普及の障害になります。アナログの置き配バッグだけだと保険は付けられませんが、アプリとの連動でトラッキングが追えますから、保険を作る要件が満たせて開発につながりました。不安にはもう一つあって、置き配バッグを置くことで不在とわかる不安もあります。この対応も現在検討中で、これができるとOKIPPAをより安心して使っていただける環境ができあがります。

亀田: 先般、日本郵便が「置き配」を本格的に始めると報道されましたが、ネット上ではやはり盗難を心配する声が多くあがりましたね。専用の盗難保険があれば、置き配に対する不安は払しょくされそうです。補償の上限はどの程度になる見通しですか?

内山: 1,000円以下は無料で補償を付けて、それ以上に関してはアプリのプレミアムプランとしてご提供することを考えています。プレミアムプランは年払いで3万円までを補償の上限にする予定です。週に2,3回購入するヘビーユーザであれば、実質1回の受け取りあたり数円〜十数円で保険が付けられるようにと考えています。OKIPPA便構想では、OKIPPA便の指定でキャッシュバックサービスも検討中で、そうすればヘビーユーザにとっては実質年間の保険料が無料になるような仕組みも考えています。


「再配達問題」について思うこと

内山: OKIPPAは、日用品を受け取るために使ってください、高額なものは必ず対面で受け取ってくださいとお願いしています。高価な商品なら、届くのを待つのも楽しいじゃないですか。でも、水やトイレットペーパーなどの日用品は、待ちどおしいとは思えない。待つことに時間を費やすのが無駄な気がします。OKIPPAは、在宅であろうが不在であろうが「待たなくてよい」受け取り方法です。待つストレス、対面のストレスを無くし、待たなくてよい配送スタイルを作りたいというのが今回のコンセプトで、待つことに時間を割きたくないものの受け取りデバイスとして使ってほしい。そして、配達員の人が荷物を持ち帰るリスクを少しでも減らせたら、というのが狙いです。

亀田: 受け取る側に費用がかからず、つらいのは配達人だけ、という再配達問題ですが、こんなことをしていてはいずれ運ぶ人がいなくなると、私は以前から言っていました。実際に今、「もうお宅の荷物は運ばない」という配送会社が出てきて、解決に向けて業界の緊急度が高まっています。この問題は、ECも含めた循環の中で起きています。関わる人はとても多いのに、再配達に関してデメリットを被っているのは配送会社だけということが、解決を遅らせています。「送料無料」をうたって販売しているECは、巡り巡って自分たちにもそのツケが戻ってくることを認識しないといけません。エンドユーザに送料が見えなくなるようにしてしまい、「送料無料」という表現が定着してしまった。本当は無料じゃありません。販売側が持つ負担を「無料」という表現にしたために、配送業務そのものに価値が無い印象を作ってしまったと思います。

内山: ユーザが送料にお金を払うことに抵抗が生まれてしまいました。これはEC全体で取り組まなければ変えられない状況です。よけいなお金がかかるなら別のサイトから買えばいい、という選択肢がある中で変えることは難しいです。

亀田: 国土交通省も「再配達は無料ではありません」とか「再配達を減らしましょう」と、PRしていますが、それ以前に、販売側に「送料無料」という表現を止めさせるべきだと思います。無料ではないのですから、誇大広告ですよね。せめて「送料自社負担」にしないと。EC市場が20兆くらいまで成熟して、販売チャネルとしてマーケットが完全にできあがっていますから、「送料はかかる」ことをきちんと打ち出して、業界として再配達を防止する方向に是正していくことが先決のように思いますね。OKIPPAのようなサービスは、その後の選択肢として出てきてもいいくらいです。

内山: 環境の変化も大きいです。昔は、誰かが家にいましたけれど、核家族化が進み、共働きが増えて来て、物理的に家に誰もいない、いられないことが普通になりました。

亀田: 環境は変化しても、道徳的な意味合いで、配達員さんが困らないような努力を買う方もしてみましょうよ、という呼びかけがあってもいいと思います。受け取り側のモラルやマナーにも問題があって、指定した時間に受け取れないなら、せめて配達員さんが困らないような工夫をしてほしいですね。人は約束したことはちゃんと守ろうとするのに、なぜ荷物の受け取りの約束は守れないのか、受け取る時だけなぜ強気な態度になるのか、本当に不思議です。

内山: おっしゃる通りです。でも、Makuakeの応援コメントを見ていると、多くの方が「配達の方に申し訳ない」という思いを持っていらっしゃることがわかります。何度も配達してもらうと配達員の方と顔見知りにもなりますから、より一層「1度で受け取れずに申し訳ない」という気持ちになるようです。これを解消するのに3,000円程度なら出してもいいかな、という気持ちで買ってくれた人がほとんどだと思います。

亀田: そこが第一歩かもしれませんね。OKIPPAは、個人の判断で選択できる再配達防止のための行動ですし、配達員さんに優しさやエチケットを持とうと、利用する人に訴えかけた方が普及は早いかもしれません。

内山: OKIPPAを使ってくれた人に、配達員からありがとうの気持ちが伝わるような仕組みを、配送会社のカスタマーサービスの一環としてとらえてもらないかなとは思っています。「OKIPPA使ってくれてありがとう」ポイントのようなものをアプリ内で用意して、使ってくれたお客様には配送会社から御礼メッセージが届くなど、OKIPPAを使ってよかったと思える仕掛けがあってもいいですね。

亀田: 誰もが気持よく買い物できる環境になるように、OKIPPAを使うことで、ECをスマートに利用するための道徳やルール、マナーが成熟するきっかけになったらいいですね。

内山社長、貴重なお話をありがとうございました!