掲載・更新日:2017.11.28

インターネット黎明期以前から物流の情報化、システム化に携わり、物流業界のIT化を牽引してきた、ロジザード株式会社 会長(当時)の遠藤八郎。在庫をキーファクターに、経営改善に寄与する様々な施策を提案し、業界から絶大な信頼を得る代表取締役社長 金澤茂則。ともに、テクノロジーで物流業界をHappyにしたいという思いで、お客様の業務がより楽に、より効率良く、より高い生産性を上げられるようにとロジザードを導いてきた二人が、今後のビジョンを語り合いました。

ロジザードが目指す3つのビジョン

金澤: 今、国内における全宅配荷物量(約37億個/年間)の取り扱いの1.5%程度にあたる、年間5000万件(平成28年度)にも及ぶ貨物が、ロジザードZERO経由で発送されています。これらに関わる情報はかなり大きなデータになっていて、今後さらに伸びていくだろうと予測しています。情報自体が1つのサービスになり得る、つまりビッグデータとしてお客様の物流のお役にたてるようになる、と考えていて、今いろいろな可能性を探っています。

ロジザードのデータ内に限りますが、何がどこに向かって動いているのかがわかります。我々としては物流がより良くなる方向にこのデータを活用したいと思っています。会長はよく、WMSは物流を最初に走らせるポジションにあると話していますね。

遠藤: そうです。配送会社は、集荷して初めて貨物の情報を入手しますから、ECだと注文されてからだいたい半日か、12時間くらいはロスがあります。これがAmazonなどのEC事業者では、受注の時々刻々で配送する方面や個数を把握できます。従って、リアルタイムにどちら方面行きのトラックがどれだけ必要かがわかるわけで、WMSは物流を最初に走らせるポジションにあるという意味はここにあります。

金澤: 朝一番でどの商品がどこにいくつ送られるかという情報がわかってスタートできるか、集荷して初めてどこにどんな荷物が動くかというのがわかるかでは、やり方も変わるし効率が大きく違ってきますよね。中小の物流会社の場合、「早く出荷しなければ」と作業の優先度の方が高いですから、Amazonのように情報を活かそうというところまではなかなかいきません。物流はすごくフィジカルなので、課題はすぐに顕在化します。ラスト1マイルの課題に、我々のデータを活かしたい。ロジザードに蓄積されるデータを活用すれば、必要なタイミングで必要な場所に効率的に集荷に行けるようになる、そうすれば無駄な集荷や待機時間を解消できます。ドライバーの労働時間の削減にも役立つのではないかと考えています。

①我々のデータを、物流がよくなるために公共的に利用すること
②少ない人数でも支障なく業務が行えること
③海外でも使えること

これが、ロジザードが目指す3つのビジョンです。

特に人口減少に対する、物流の方向性は大きな課題です。中小企業が、少ないリソースで質の高い仕事ができるよう、コストダウンとは別の次元で生産性向上を考えていかなければなりません。我々が考えているのは、例えばシェアモデルのようなソリューションです。高額なマテハン等の機器も、使う時期をずらしてシェアするという考え方があってもいいと思います。短期レンタルも年間を通じて先々の行き先が見えていれば、年間レンタルと同じです。分母が大きいことで解決できることは、案外多いと思います。

遠藤: 他にも、例えば1つの倉庫を複数の会社が共有するルールなど、規制を緩めてもっと自由になってもいいと思いますね。財務会計ルールの面からは難しい課題もあるけれど、それこそ情報管理をきっちりやればできるはずです。

金澤: データセンターのように仮想的な仕切りを作って、リアルに場所をシェアし合うこともできますよね。ビジネスモデルとして「あり」だと思います。


新たなサービスの創出

金澤: 取り扱いデータが大きくなることでできるサービスはいろいろあります。提供を始めたマッチングサービスは、荷主さんと倉庫さんの間における情報のアンマッチングの解消を、我々ならやれるかなというところから始めた無料サービスです。

ロジザードはいろいろなマテリアルに対応していますから、様々な業種業態の特長がわかっています。3PL業者さんと荷主さんの間で中立なポジションにいることと、倉庫の悩み、荷主さんの要望、それぞれがわかるので、双方にとってのメリットの落としどころがわかります。

遠藤: だから、ミスマッチもよくわかる。

金澤: そうです。営業担当の方は必死ですから、マテリアルの特性がわからないまま取り引きを決めていることがあって、それで起こる悲劇を我々はずいぶん見てきました。倉庫会社も得意不得意があります。例えば、荷主さんが海老を取り扱うなら、「海老だったらあの倉庫が強い」と経験上アドバイスができます。間に立ってつなげる、それはお互いにHappyじゃないかと思います。

遠藤: 無料のサービスではあるけれど、そこでロジザードを使ってもらえば、三方よしです。

金澤: 人材の確保についてもいろいろアイディアがあります。ロジザードが使えれば、転居先でも継続したスキルを活かして働くことが可能だと思っています。物流の求人の多くは、「誰でもできる簡単な作業です」と募集されるのが常で、スキルも何も「よくわかっていない人が来る」可能性が高いものです。評価軸としてロジザードが使えることがキーとなり、作業経験値や期間を確認できるなら、採用する方も安心です。出荷検品を教えなくてもいい人材を獲得できるから、教育コストもかからないし、まさに即戦力となる人材を採用することができるでしょう。ロジザード資格認定でもやりましょうか(笑)。
それに加えて、働くことをもっと楽しくできると思います。たとえば、検品1万回を超えたらロジザードがその方を表彰する制度や、ポイント制でGiftが受け取れる制度などどうでしょう?「あともうちょっとやらせてください!ステージアップが間近です!」と、作業をどんどんやりたくなるような環境にもなっていくかもしれません。こうしたアイディアは、たくさんわいてきます。


在庫側から物流業界の景色を見る

金澤: ECマーケットがどんどん膨らむ今、私たちのサービスの原点でもある「在庫」の情報は、重要なコンテンツになりつつあります。WMSというのは、いつ、どこに、何が、何個あるのかを指し示す情報が基本となっています。これは倉庫の中だけにとどまる話ではありません。
店舗であろうが倉庫であろうが、リアルな場所別在庫状況がわかる。これは我々のサービスの究極のノウハウですが、その活用の一つとして、いわゆるオムニチャネル化を大企業じゃなくても、中小企業でもできるサービスとして展開していきます。確実に買えるという条件で、購入者は意思決定をします。商品が今どこにあるかが明確であれば、売り逃しも適正在庫の問題も解決しやすいと考えています。
今は、AIに注目が集まり未来予測の話がトレンドですが、当社は、「現状と過去の情報を見える化するだけでも大きな価値がある」と思っています。在庫側から見ると、まだまだやれること、やる価値のあることがたくさんあります。

遠藤: 難しい飲食のマーケットにも切り込んでいきたいね。食品は洋服などとは全く違う物流特性のマテリアルです。
賞味期限、温度管理など食品特有の商品管理機能を、企業毎の専用機能でなく多くの企業が使えるよう汎用化するには、構築方法や視点が違います。車のシートならば、F1の「ドライバー専用シート」と一般車の「誰でもドライバーシート」を作る違いのようなことです。標準的な機能で多くの人が使ってもらうようにするには、超えなければならないハードルがある。
でもロジザードとしてはそうした高いハードルにチャレンジしてきた歴史があるからね。できないことはない、そう思っています。

金澤: 今後は情報技術の革新が先にあり、そこから新たなビジネスが生まれていく世の中にシフトしていくでしょう。でも人と物がある限り、物流はなくなりません。ロジザードも、関わる人がみなHappyになる三方よしの新しい物流サービスを考え、生み出し、提供し続けていきたいですね。