掲載・更新日:2021.04.05

物流管理を劇的に効率化できると期待の高い「RFID」。導入のネックとなっていたRFIDタグの価格もここ数年で大幅に下がり、特にアパレル系を中心に、導入企業が増加中です。ロジザードでは次世代を見据え、ロジザードZEROの強化機能の一つとして、早い時期からRFIDに対応するアプリの開発に着手し、製品化に欠かせない実装テストの機会を探っていました。このたび、バスケットボールライフを支援する株式会社アウトナンバー様と3PL事業者である株式会社S-PAL様のご協力を得て、RFIDオプション機能のβ版を現場で試行、ブラッシュアップ。製品化への大きな一歩を踏み出しました。荷主様・倉庫様、そして開発担当それぞれの立場から見た、RFIDオプション機能開発のストーリーをお届けします。

バスケットボール文化を日本に浸透させたい

はじめに、アウトナンバー様の会社概要をお聞かせください

小野田: バスケットボールを文化として日本に定着させたい。その思いで、バスケットを楽しんでもらうための様々な要素を、トータルプロデュースしている会社です。創立は、2006年10月で、現在約20名のスタッフで運営しています。
主体は、2013年から展開するアパレルブランド「ballaholic(ボーラホリック)」です。スポーツウエアというカテゴリーに限定することなく、街着、普段着のファッションアイテムとして、ストリートファッションとスポーツウエアの融合によるライフスタイルそのものを提案しています。
そのほか、ストリートバスケのリーグ運営を担う「SOMECITY(サムシティ)」事業、バスケットボールスクール「Asphalt Roots」事業、最近では個人宅にバスケットコートを設置する事業もはじめました。
スポーツは日常的に遊べる場所や、活動するための仕掛けがないと、能力が向上しません。野球やサッカー(フットサル)と同様、日本でもバスケットボールをライフスポーツとして認知、浸透を図っていくのが、当社の使命です。

S-PAL様の会社概要、アウトナンバー様や当社とのつながりについてお聞かせください

後藤: 当社は、2003年に設立した物流サービス企業です。「通販物流のスペシャリスト」として、標準品の物流はもちろん、冷凍・冷蔵物流や大型荷物、DM発送、包装、返品作業などを行っています。アウトナンバー様とは、「ballaholic」の立ち上げ初期からお付き合いがあります。ロジザードとはそれ以前からで、ロジザードPlusの時代からかれこれ10年ぐらいのお付き合いになるでしょうか。当社では様々なWMSを使ってきましたが、ロジザードはロジザードPlusの時代からダントツに使いやすく、直感的に操作できる点がとても気に入っています。サポート体制も充実しているので、現場スタッフも含めてみな安心して長く利用しています。

RFID対応のWMSを探せ!

アウトナンバー様では、どのような経緯でRFIDを導入されたのでしょうか?

小野田: 2017年にオープンした「ballaholic」の実店舗で、タブレット型POSレジを導入したことをきっかけに、データの取得や管理、追跡に便利なRFIDタグの検討をはじめました。アパレルは色やサイズバリエーションが多岐にわたり、管理が大変です。従来のバーコード管理では、タグを読み取るために1点1点バーコードを探したりパッケージが反射して上手く読み取らなかったりと、入出庫も棚卸しも大変手間がかかりました。RFIDならこの面倒な課題を一気に解決できます。RFIDタグも実用にかなう価格になりました。作業効率や費用対効果を考えると、アパレルにRFIDを導入しない理由はなく、将来的に間違いなく置き換わっていくでしょう。ならば、アイテムが少ない今から使うべきだと考えました。2019年から導入をはじめて、しばらくはバーコードと混在で運用しながら、1年ほどかけてすべての商品をRFIDタグに替えました。
RFIDの導入を機に、自前で倉庫を持とうというプランが生まれ、その流れでS-PALさんから一度別の倉庫に移りました。それと並行して、RFIDに対応できるWMSを検討しましたが、相談した会社はいずれもRFIDが機能として備わっていませんでした。その中ではRFID機能を開発途中だったロジザードの提案が、最も真摯で真剣で現実的でした。

RFID対応のWMSを検討される中で、当社との接点が生まれたのですね

小野田: そうです。実は自前で倉庫を持つ企画が頓挫したため、以前からロジザードを使っているS-PALさんに再度商品を戻し、そこでRFID機能を現場で試しながら3社にとってよいものを目指していこう、という話になりました。

後藤: RFIDの扱いは当社も初めてで未知の領域でしたが、今後間違いなく普及する機能だと思いました。ロジザードは技術面でもサポート面でも信頼している会社でしたので、「おもしろい!ぜひやりましょう」と話が進みました。

ほぼ完成していたRFIDオプション機能

通常、新機能はシステム開発が主導しますが、今回「製品企画部」が動いたのはなぜですか?

富永: ロジザードの製品企画部という私のセクションは、次代の主力製品となるプロダクトを企画し開発する部署です。今後の物流にRFIDは必須と考えてアプリの開発を進めており、アウトナンバー様からご相談をいただいたときには、ほぼ形は出来上がっていました。ただ、それまでRFIDの案件がなく、使いながら仕様を固めるところまで至っていなかったのです。現場の実務からフィードバックされた内容が反映されていなければ、優れた機能も絵に描いた餅です。アウトナンバー様からのご相談のおかげで、S-PAL様とも連動して、アプリが運用に適するかどうか試せる場ができました。

約3万点の入庫検品を正味2日間で達成!

現場で実際に使ってみた感想や、苦労した点などを聞かせてください

後藤: ハンディターミナルとは勝手が違うので、まずRFIDリーダーの使い方をみんなで学び、読み取りの精度を確認しました。RFIDは電波で通信します。バーコードのように接触させることなく、段ボールの中に格納されているものでも、一括でタグを読み取ることができます。ただし、電波なので反射などの干渉があるため、癖をつかむのにいろいろ工夫を重ねました。正確に読み取れるのは倉庫内のどこなのか、どのような方法で読み取るといいのか、アウトナンバー様からの荷物が搬入される日まで、様々な手法を試しました。

富永: RFIDは環境の構築が特に重要で、やってみないとわからない点が多いのです。開発側では、電波の強度を調整する機能を加えました。

後藤: 磁気を吸収するシールド布を提案いただきましたが、高額なのでたくさんは使えないので、同じ効果を出せる工夫をスタッフと考えました。いろいろ試した結果、段ボールを組み合わせて、100円ショップで売られている防災用のアルミシートを貼り付けたものがとても使い勝手がよく、今もこれを改善しながら使用しています。

富永: これは、現場力の賜物だと思いました。専門家もお墨付きの仕掛けです。スタッフの皆さんのアイディアがすばらしいですね。

後藤: いろいろな意見、アイディアはどんどん口に出してやってみようという、自由闊達な社風だからかもしれません。いかに高精度で効率的にタグを読むか、それぞれに考えを持ち寄って一つひとつ試しました。自分たち側に何か電波干渉するものがあるかもしれないと疑い、アルミでヘルメットを作って実験してみました(笑)。未経験ながらも、とにかくいろいろやってみようと知恵を出し合いましたね。

手探りながら準備を進めて、アウトナンバー様の荷物移動の当日を緊張して迎えました。約3万点の商品を3台のRFIDリーダーで入庫検品する必要がありましたが、正味2日間で処理が完了しました。1週間程度の作業時間を見込んでいたので、これにはスタッフ全員が本当に驚きました。作業内容についても、小野田社長から「満足」とのお返事をいただいて...ホッとすると同時に、RFIDの可能性にワクワクしたことを覚えています。

小野田: 12月に発注して2月には稼働できましたから、このスピード感には満足しています。事前にテストできない状況で、仕様も固まっておらず、未確定のことばかりでスタートしましたが、不具合が生じたらすぐに修正する対応がロジザードはとても早い。スピード感はとても大事です。柔軟かつ迅速に対応していただき、倉庫移動の当日には稼働できる状態まで仕上がっていました。

富永: 「課題管理表」を作って一つひとつの課題の進捗を可視化、皆さんと共有できていたので、認識のずれが防げたと思っています。

現場が使いやすい機能を一緒に作っている実感

フィードバックを受けて、反映に苦労した点などはありましたか?

富永: 「手数を少なくしたい」という現場の声への対応です。実際の作業で気付いた要望でした。開発上ちょっと大変でしたが、この作業をしたら次はこれ、と運用の流れが決まっている部分もあるので、例えばボタンを押さなくてもすぐにタグを読み取る画面に推移するよう、機能改善をしました。

小野田: せっかくRFIDで作業効率を上げようとしているのに、読み取り画面までに何度もボタンを押す操作があっては、手数が増えて意味がなくなりますから、変えてほしいと依頼しました。

後藤: 特定の商品(タグ)だけ誤スキャンが出ることがあったので、読み取り強度を変える機能を付けてもらいました。さらに、スキャンのスピードアップを希望して、読み取り速度を調整してもらいました。まだまだ改善の余地はあると思います。こうした現場のリクエストを遠慮なく言えるのはうれしいです。現場にとって使い勝手のよい機能を、一緒に作っている実感があります。

富永: 開発時は想像の世界で作りましたが、実用化するのに足りない機能や、運営上見合わない機能、操作性など現場の要望を、システムに反映し続けました。随時3社で話をしながら不都合を修正、欲しい機能を追加するなど調整を続けた結果、非常に使い勝手のよいアプリに仕上がりました。WMSでは入庫作業が即在庫に反映されるため、①入荷、②入庫~出荷、③在庫、④棚卸しの一連の業務がスムーズに連動していて、とても効率的に管理できるシステムができています。

リードタイムを短縮し、販売機会損失を減少できるRFID

導入による効果はありますか? どのような効果が期待できるでしょうか?

小野田: 運用的な面では、入庫が早くなりました。荷受時間の短縮はもちろんですが、例えば店舗から倉庫への出荷と入庫のいずれも素早く正確にできるようになりました。バーコード作業では、入庫予定と実際の入庫商品が違うことがたびたび発生し、確認作業などに手間取ることがありましたが、RFIDでそれが解消されました。
また、RFIDの導入で再入荷のリードタイム短縮を実現し、特に売れ筋商品の販売機会損失を削減することができました。これはアパレルにとって非常に大きなメリットです。アパレル製品は、販売できるタイミング、旬が限られていて、1,2日違うだけで販売機会の損失につながります。売れ筋商品をいち早く読み取り、即再生産して再入荷できれば、販売機会ロスを防げて在庫リスクも減らせます。これがRFIDの導入で最も期待できるメリットではないでしょうか。

富永: RFID導入を迷っている場合じゃないですね。

小野田: RFIDの導入はアパレル業界では今も大手企業の一部にとどまっていますが、活用できるのであれば早く導入した方がよいに決まっています。ここであげた効果以外にも物流倉庫内でこれから期待される効果は沢山ありますし、店舗業務やマーケティングまで目を広げればRFIDの将来的な効果は計り知れません。

後藤: 今はまだRFIDがどのようなものか知らない人が圧倒的です。認知が広がれば、使わない理由はなくなるはず。倉庫の運用面からも、RFIDはもっと普及してほしいですね。ロジザードのRFIDオプション機能を使えば、リストはリーダーの中に入っていますから、間違いもなくなり入庫は本当に楽になります。アパレルだけでなく、他の業種でもいろいろな使い方ができそうですし、可能性が広がる予感しかありません。

小野田: 在庫管理や備品管理には、特に威力を発揮するのではないでしょうか? 例えばイベントのパートナーに委託販売してもらうことは工数の観点から行っていませんでしたが、RFIDがあれば面倒な管理がほぼなくなるので今年から始めようと検討を開始しています。RFIDの導入で今まで面倒でできなかったこと、埋もれていた販売機会を活かせるようになります。逆にRFIDをまだ導入しないという判断がその様々な可能性の広がりを閉じてしまうのではないかと感じています。

今後もRFIDオプション機能の充実、強化に期待

最後にロジザードに期待することをお聞かせください

小野田: 製品の機能は8割方できていると思います。今後は倉庫業務を更に効率化できるよう、様々なハードウェアにチャレンジしてきたいので、我々の希望、提案するハードウェアの対応を積極的にお願いしたいと思っています。

後藤: 今現在で一番改善したいのは、誤スキャンです。何が原因なのか、メカニズムを明らかにして対応できたらと思っています。誤スキャンキャンセラーのような機能もあるとうれしいですね。

富永: 誤スキャンはなくしたいですね。環境構築は、RFIDの永遠のテーマだと感じています。RFID対応機能は拡張中で、ロジザードとしても、ロジザードZEROに次ぐ主力製品として世に送り出したいと、力を入れています。

後藤: S-PALとしても「RFID対応倉庫」としてアピールできます。これからも機能の充実を期待します。

富永: S-PAL様には荷主様との懸け橋になっていただけると、私たちも期待しています。技術屋の私たちは現場の知識に疎いので、今回のように実際のオペレーション課題を共有していただけるのは本当にありがたいです。これからもお客様の声を反映し続け、より使いやすい製品に仕上げていきたいと思います。本日は貴重なお話をありがとうございました。

ユーザーの皆さま、オプション提供開始までいましばらくお待ちくださいませ!