掲載・更新日:2024.08.21
「在庫は商売の原点である」。ロジザードはその考えの下、在庫管理でお客様のビジネスの根幹を支えるお手伝いをしています。多くの企業が在庫管理システムを導入するようになりましたが、地方に目を向けるとまだまだアナログ管理を続ける企業も多くあり、デジタル化できないことによる弊害が生じています。
今回は、アナログ管理からの脱却を目指し「ロジザードZERO」を導入された、熊本県で食器のレンタル事業を営む株式会社クボタ産業を弊社柿野が訪ね、執行役員の宮本様に地方産業におけるデジタル化の重要性について伺いました。
目次
デジタル化の遅れが足を引っ張る地方の伝統産業をよみがえらせたい
柿野: 株式会社クボタ産業様は、食器のレンタル事業をメインに、販売やOEM製作事業を展開されています。器のレンタルというユニークなビジネスモデルを30年以上続けていらっしゃいますが、今回、アナログでの管理に限界を感じ「ロジザードZERO」を導入されました。詳しくは、導入事例記事 をお読みいただきたいと思いますが、そもそもは2023年にCYホールディングス傘下に入られたことがきっかけとのこと。その経緯からお聞かせいただけますか?
宮本氏: CYホールディングスは、熊本出身の代表が2008年に起業したIT企業、株式会社サイバーレコードが母体で、熊本の発展に寄与する活動や事業承継に力を入れています。クボタ産業は優良顧客をもつ優秀な会社ですが、デジタル化が遅れて販路の拡大ができず、負のスパイラルに陥り苦しんでいました。取引先も多く、この会社をなくしたら地元にとって大きな打撃になると、業務資本提携を結びCYホールディングスのグループ会社となりました。
私はもともとサイバーレコードで、EC代行やふるさと納税事業の営業を担当していました。食器レンタルという事業は初めて触れる世界でしたが、ここまでアナログならデジタルの力でどこまでプラスに転じられるか挑戦したい、と思い飛び込みました。
柿野: デジタルの業界からの思い切ったチャレンジですね。新しい業界に飛び込んでみて、実際の現場の状況はいかがでしたか?
宮本氏: クボタ産業は、有田焼や美濃焼の窯元とのパイプがあり、素晴らしい器をレンタルという形で提供しています。必要な分だけ「借りる」という地球にやさしい選択肢を提示できる事業で、時代に即したビジネスモデルだと思いました。しかし本来なら全国で通⽤するビジネスモデルであるにも関わらず、創業当時から続くアナログ運営が要因で、マーケットを拡⼤できずにいました。あくまでも我々の目標は、全国に当社の安定したレンタルサービスを提供すること。そのビジョンの達成には、デジタルの力が必須です。特にリアルタイムで在庫・商品のステータスを把握する仕組みを整えるなど、バックエンドを構築、強化するためにシステム導入が急務だと感じました。
柿野: 今回、システム導入を実現するには課題も多かったと聞いていますが、システムを導入することで具体的にはどのようなことを実現したいと考えられたのですか?
宮本氏: 商品と在庫数をリアルタイムで把握すること、業務効率化を図ること、この目的だけでも導入価値は十分にありますが、私は日々の運⽤で得られるデータが重要だと思っていました。日々のデータを分析できれば、売れ筋・死筋商品の把握が可能になり、仕入れの適正化や顧客満⾜度向上、コンバージョンの向上につながります。システムの活⽤⽅法は無限⼤で、描くビジョンに向かってスタートするには、どんなに大変であってもシステム導入以外の選択肢はありませんでした。
魅力ある職場とITで地方に活力を! その思いで立ち上げた熊本発のテック企業
柿野: CYホールディングス様は、地域活性事業に取り組まれているとのことですが、その意図について詳しくお聞かせいただけますか?
宮本氏: CYホールディングスの母体となるサイバーレコードは、熊本発のテック企業です。熊本に限らず、地方は若者の流出が多いのですが、これは地元に魅力的な職場が少ないことに起因します。IT事業は、地域に制約を受けません。創業者は、「働き手に魅力あるテック企業を熊本で!」と、一念発起し地元で起業しました。
現在は、EC サイトの運営代⾏事業とふるさと納税運営代⾏事業を展開しています。札幌や大阪にも支社があり、地域の事業者が元気で利益を上げ、新たな雇⽤を創出し、従業員が満⾜するという好循環を大切に考えて活動しています。
柿野: 代表の強い思いが根底にあるのですね。地方で暮らせるかどうかは、そこに働く場所があるかどうか。地元に魅力的な会社や産業があることが、地域活性化には欠かせません。ふるさと納税の運営代行事業も、その考えからですか?
宮本氏: 地域が衰退するのを黙ってみているわけにはいかない、という思いがあります。地域の事業者が元気でなければ、地域は活性化しません。ECのノウハウをふるさと納税の運営に活かし、地域産業を担う事業者の力になりたいと考えました。
柿野: 確かにインターネットを経由して商品が家に届くという点では同じですから、EC支援業者がふるさと納税支援も手掛けている例は多いですよね。ただ、御社のように地域の事業者の力になりたいという出発点から、ふるさと納税支援を始められた会社は少ないように思います。実際、事業者と活動する中で、地方の実態、特にIT化の遅れについては、どのように感じましたか?
歴然としたデジタル格差は地方産業活性化の大きなボトルネック
宮本氏: 全国の自治体や事業者の皆さんと話をして感じたのは、やはり首都圏と地⽅の間には、歴然としたデジタル格差がある。IT化の遅れが、地域産業発展のボトルネックになっていると思いました。もちろん地⽅でもIT 化を推進している企業はありますが、いまだにパソコンやスマートフォンを利⽤しない、インターネットやメールを使わない企業が存在します。課題は感じていても、改善に向けて実行できない人たちがたくさんいました。また、過去に導入した古いシステムを使い続けている事業者も多いです。世の中はもっと便利になっているのに、「変えたくない」、「今できているからこのままでいい」と頑なに新しいテクノロジーを受け入れない(苦笑)。
ふるさと納税は、「産直」で全国に発送するビジネスですが、すでに必要なシステムが備わっています。生産者はふるさと納税に参加して、最新のシステムを利用することで在庫管理の概念を学べます。仕組みが理解できれば自分たちでも構築できる、その一歩としてふるさと納税の仕組みに参加するのはとてもよい機会だと思っています。
柿野: 確かに古いシステムを使い続ける企業は多いですよね。地元の開発企業に依頼して、自社用にオーダーメイドで作ったシステム。それは、その時点ではベストなのかもしれませんが、時代の流れにつれシステムはどんどん陳腐化します。技術の革新は進み、当時では考えられなかった価格や品質のシステムやサービスがどんどん生まれています。変化を恐れこの流れに取り残されてしまっては、ビジネスの競争力自体が失われてしまう恐れもあります。
我々が支援している物流業界もデジタル化が比較的遅れていた業界ですが、現在では物流DXの掛け声のもとに変革の時が訪れています。では、地方にも変革の波は起こせるでしょうか。波を起こすには何が必要だと思いますか?
情報は平等。貪欲に「知り」迅速に「行動する」ために必要な、専門家の伴走支援
宮本氏: 地⽅に限りませんが、「知る」ことに貪欲なこと、そして「実⾏」に移すことが重要です。DX の推進で市場の拡⼤、労働⽣産性の向上、⼈材の獲得を実現していかなければ、時代に淘汰されてしまうでしょう。当然のことですが、地⽅にも知識と熱意をもった優秀な企業や⼈材が存在しますし、地方ならではの強みもあります。例えば、誰かとつながりたいと思えば、ローカルな世界では共通の知り合いを探すことは都会よりも容易です。狭く濃い人間関係も、視点を変えれば「新しい知識を得る機会が多くある」ということ。地⽅ならではの魅⼒といえます。
柿野: 情報を知ること、得ることは重要なカギになりますね。インターネットがない時代には、都市部と地方の格差は大きかったかもしれませんが、今はそうではない。情報だけは平等に受け取れるし発信することができます。とはいえ、誰もが情報を受け取れるからこそ、知るばかりでは何も得られません。いかに迅速に実行するかが実りを享受できるか否かの境目となりますが、地方で行動に移すのはなかなか大変。覚悟や勇気が問われます。
宮本氏: だからこその伴走支援です。サイバーレコードやCYホールディングスは、それを「どうやってやれるのか」を事業者と一緒に考え、一緒に一歩を踏み出そうというアプローチで、伴走支援に重きを置いています。システム導入など、新しいことを始めるにはどうしても抵抗や痛みが伴います。その生みの苦しみの部分を伴走することで、どれだけの人が一歩を踏み出せるか。ここは、ロジザードと思想が共通しています。
今回のWMS導入では、私に商品や在庫管理システムを使った経験がなかったこと、今後ステークホルダーに対してシステムを浸透させることも一つのミッションと考えていたことから、伴走支援の有無は重要なポイントでした。手厚いサポート体制や会社の風土を重視し、ロジザードに決めた経緯があります。
柿野: ロジザードも伴走支援をすごく大切にしています。クラウドサービスと言えば、インターネット上で申し込みや導入が完結して気軽に使える印象があるかと思いますが、業務システムである以上、キチンと在庫管理ができたり現場のオペレーションが改善されたりしなければ意味がありません。営業による現場訪問から始まり、導入SEによる現地指導に至るまで、お客様の立場に立った支援を実現したいと考えています。最近は、そのような考えを「顔の見えるクラウドサービス」という形で皆さんにお伝えするようにしています。
DX推進で地方産業のくすぶるポテンシャルを引き出し、マーケットの拡大を図る
柿野: ロジザードのお客様にはアパレルや通販、物流系の事業者様が多いのですが、他業種でも在庫管理で困っている人がたくさんいることに気づかされました。在庫管理システムの存在や重要性を、もっと広く世に知らせなければなりませんね。地方へも積極的に足を運び、システム導入を必要としながら二の足を踏んでいらっしゃる事業者を、伴走支援していきます。
最後に、宮本様の今後の展望を聞かせてください。
宮本氏: まずはクボタ産業の主力事業であるレンタル事業の安定化を図ること、そして業務効率化の実現と費用対効果の測定を行います。社内にシステムが浸透したタイミングで、全国へマーケットを拡大します。今回のシステム導入に関しては、当社サイトでもその経緯を公開する予定です。陶磁器業界はとにかくIT化が遅れていますから、我々の経験や考え方を共有し、システム導入を現実のものにしていただけたらという願いがあります。業界全体のDX推進の一助となるべく、当社の取り組みが一つのロールモデルとなり、システム導入の認知促進につながればと考えています。
柿野: 地方の地場産業を担う企業に、管理システムを普及していくこと、DXを推進していくことで、内包するポテンシャルを引き出したい。その思いはロジザードも同じです。どんな商売でも、「在庫」はビジネスのベースです。ロジザードは、商売の原点となる在庫管理にフォーカスし、ビジネスの根幹を整えるお手伝いをしていきます。
思想が似ている両社ですので、地方産業の活性化にかかわる面白い取り組みができるかもしれません。ぜひこれからも情報交換をよろしくお願いいたします。今日は貴重なお話をありがとうございました。