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最終更新日:2024/01/17 システム在庫管理物流ロボット物流業務の効率化運輸業・倉庫業(3PL事業者)

WMSとは?物流業務におけるメリット、在庫管理システムとの違いを解説

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WMS(倉庫管理システム)とは、物流業務の「保管」をサポートするシステムで、物流分野の機械化とデジタル化により「物流における標準化」を目指す「物流DX」には欠かせないシステムです。しかし、「在庫管理システム」とひとくくりに説明されることもあり、基幹システムの在庫管理機能との違いを知らない方もいらっしゃるはず。WMS特有の、他のシステムにない機能を活用することで、物流業務に関する課題解決に役立ちます。今回は、そんなWMSの役割やメリット、在庫管理システムとの違いや導入の目安について解説します。

WMSとは 2つの大きな役割

WMSはWarehouse Management Systemの略で、「倉庫管理システム」と言います。「倉庫の在庫管理システム」、「物流センター管理システム」と呼ばれることもあります。入荷・出荷・保管・棚卸といった業務をデータ化して管理することで、倉庫内の業務を効率化、標準化します。

WMSは大きな2つの役割を担っている

①倉庫内の実在庫管理と把握

基幹系(販売・生産等)システムやERP、ECサイト(ネットショップ)のカートシステムやOMS(Order Management System/受注管理システム)で管理される「理論在庫」でなく、WMSでは「実在庫」を管理します。倉庫内の現物在庫を入出荷作業の動きに合わせてリアルタイムに管理し、実績等から詳細に倉庫内の状況を把握することができます。

理論在庫と実在庫の違いについては、こちらのコラムがおすすめです。

ERPとOMS、WMSにおける在庫管理の違いと正確な在庫管理のコツ
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②入荷・保管・出荷・棚卸の業務をサポート

関連システムと連携しながら、入荷から保管、ピッキング、加工、検品、梱包、出荷、発送、そして棚卸の業務フローに沿って、正確でスピーディーに業務を実現する為の機能が備わっています。例えば、ハンディターミナルやスマートフォンを使ったバーコードの読み取りや、マテハン機器や物流ロボットなど各種物流機器との連携で格段の生産性向上を実現します。

WMSを導入するとたくさんのメリットがある

①入荷・保管・出荷・棚卸の管理と業務の見える化

システム管理となるため、エクセルやアクセスを使った不安定なデータ管理を行う必要はなくなります。また、クラウド型WMSを導入することで、インターネットの環境さえあれば、どこにいても管理状況を把握できます。

エクセルとWMSの違いについては、こちらのコラムがおすすめです。

エクセル・スプレッドシートで在庫管理をするメリット・デメリットは? クラウド倉庫管理システム(WMS)と比較してみた
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②作業の効率化・正確化

考える・歩く・探す時間を無くす最適なルートが考慮されたピッキングリストの出力、誤出荷を防ぐ梱包直前のバーコード検品など、現場の効率性・正確性向上のための機能が備わっています。

③正確な在庫・管理情報のデータ化

ハンディターミナルで情報を記録することで、正確な在庫データ管理をすることができます。また、これらのデータは出力(エクスポート・ダウンロード)が可能なため、販売部門はリアルタイムに倉庫の状況を把握することができ、本部のデータ収集を楽にしてくれます。

在庫データの活用については、こちらのコラムがおすすめです。

物流戦略やマーケティング施策を成功に導く、在庫データの活かし方 ~躍進企業にみる物流データ活用法~
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④オートメーション化の検討

オートメーションを検討する場合、高額なシステム開発費用が発生すると思う方が多いと思いますが、クラウドサービスで提供されているWMSによっては、すでに倉庫内の物流オートメーション化を想定した機能が備わっているものがあります。例えば、自動梱包機、自動封函機、物流ロボットとの連携やその他マテハン機器との連携です。今後ますます人手不足が顕著化される中で、オートメーション化が注目されています。

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【要点解説】物流ロボットとは?導入メリットとおさえるべきポイント
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WMS特有の機能

従来の基幹系(販売生産・受発注管理)システム、ERPは元々が物流の効率化を目的としていないため、それらに備わっている物流管理機能は、補完的で本格的な機能ではありません。荷主様の販売管理システムを利用して入出荷や在庫管理をしている3PL/物流倉庫事業者様の場合は、システムの機能が不足しているため、物流業務の支援が難しい場合が多いのです。

他のシステムにはない、WMSの機能の一部をご紹介します。

※WMSによって、標準で備わっている機能は異なります。

有効期限管理(賞味期限など)

一見、基幹系システムや受注管理システムでも備考欄に入れて運用ができそうですが、在庫別に管理する機能がないことがほとんどです。WMSでは、在庫別に有効期限管理ができるほか、先入れ先出し・有効期限の近いものから引き当てをかけるなど、システムが判断してくれます。

ロケーション管理

ロケーション管理とは、倉庫内の保管スペースを詳細に分割して番地付けを行い、保管場所と在庫を柔軟に紐付けして管理するものです。また、入出荷作業の正確性と速さの両立に重要な機能でもあります。従来の倉庫内業務の最大の課題は、必要な在庫が何処にあるかを知っている人がベテランや担当者に限られることです。WMSは、リアルタイムに在庫の保管場所と、入出荷履歴を管理でき、在庫差異調査なども容易なため、高品質で高速な在庫管理を実現します。倉庫は建物形態や保管設備、搬送機器など多様です。商品保管方式も固定ロケーションやフリーロケーション、バックヤード在庫管理など柔軟に対応できる機能が必要です。

ロケーション管理については、こちらのコラムがおすすめです。

物流倉庫における、ロケーション管理の種類と特徴
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品質区分の管理

WMSには、1つの商品に対してA品・B品・C品といった区分を付けることができます。A品は通常発送用に引当てがかかる、B品はセール用で指定があった場合のみ引当てがかかる、C品は廃棄のため引当てをかけない、といった管理ができます。

トレーサビリティ管理

商品によってはシリアル番号が振られ、どこにどのシリアル番号の商品が送られたか履歴を取る必要があります。WMSには出荷時にシリアル番号を記録する機能があり、リコールが起きた際の対応をスムーズにします。

ピッキングリスト

WMSの特徴の一つが、「最適なルートを考慮したロケーション順に並べられるピッキングリストの出力ができること」です。

基幹系システム・ERPや受注管理システムでは、ピッキングリストの商品の並び順がデータを取り込んだ順番に出力されるものがほとんどです。WMSでは、ロケーションの並びを加味して、システム内で商品の並び順を入れ替えて出力することができます。

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そのため、ルートを考える時間、無駄な移動や探す手間がなくなります。出荷が多くても効率良く作業を行うことができます。

WMSは商流とマテハンをつなぐハブになる

商流システムとの連携

WMSは商流のシステムと連携して真価を発揮します。よくあるのは、通販の場合はカートシステムや受注管理システム、卸の場合は基幹系システムやERPとの連携です。受注情報や入荷予定情報を商流用システムから物流用システムであるWMSへ、入出荷実績や在庫状況をWMSから商流用システムへ渡すために双方のシステムをデータ連携します。その際は、商品マスタなどの必要なデータを商流用システムから同期させることから始まります。主にCSV連携が採用されておりますが、オプション機能、カスタマイズによってFTPやAPIによる自動連携も可能です。

また、近年では、「オムニチャネル」や「OMO」など、店舗とECを繋ぐ、融合するビジネスモデルが日本でも取り入れられています。その場合、例えば店舗にある商品の在庫数をECサイトに掲載、ECで購入した商品を店舗受取にする、といった仕組みづくりに、商流と物流の連携が必要となります。

マテハンとの連携

オートメーション化のためにマテハン機器を導入している倉庫では、WMSを使用する範囲と同一の業務や、連動する業務の中で使用される機会が多いため、マテハン機器と連携のできるWMSを使用することで、倉庫内で実現できる業務範囲が広がります。

物流ロボット、ソーター、自動梱包機、DAS(Digital Assort System デジタルアソートシステム)などのマテハンを稼働するためには、それらに指示を送り、制御するためのシステム「WCS(Warehouse Control System/倉庫制御システム)」が必要です。
また、倉庫内での業務工程において、複数のマテハン機器を組み合わせて自動化を図る場合、マテハン機器・WCSを統合管理し指示を送る「WES(Warehouse Execution System/倉庫運用管理システム)」を使用します。そのため、WMSとマテハン機器を連携する場合は、WMSとWCS、またはWMSとWESとの連携が必要になります。

基幹システムに含まれる在庫管理システムと、WMSの違いは?

WMSに似たもの、よく混在されてしまうものとして、「在庫管理システム」があります。

在庫管理システムとは

在庫管理システムとは、自社の資材・商品としての「在庫」に関する管理を行うためのシステムです。例えば、ECサイトなら商品在庫、製造業であれば部材や完成した商品などが在庫に該当します。

在庫管理システムでは、入出荷における数量管理はもちろん、ロケーションや棚卸などのマネジメントにも用いられます。これらの機能を活用しながら在庫を適切に管理することで、余剰在庫や販売機会損失の減少を目指し、企業の利益最大化につなげます。

なお、「在庫管理機能」は、基幹系システム、受注管理システム、WMS、生産管理システムなど、さまざまなシステムに搭載されていますが、それぞれ役割が異なります。

在庫管理システムの主な機能

在庫管理システムには、在庫に関するさまざまな管理機能が備わっています。以下は、そのなかの代表的な例です。

  • 品目管理:取扱商品の品目および関連する情報をデータとして登録し、一覧管理する機能
  • ユーザー管理:在庫管理システムを利用するユーザーの追加・管理に加えて、それぞれの閲覧・操作権限などを設定する機能
  • 仕入先管理:商品の仕入先に関連する情報をデータ化し一覧管理する機能
  • 顧客管理:商品を購入する取引先に関連した情報をデータで一覧管理する機能
  • 在庫明細:在庫の状況(ロケーションや賞味期限、在庫期間など)を明細化し管理できる機能
  • 入出庫伝票:商品の入出庫時に必要となる伝票の発行機能
  • 棚卸伝票:在庫の棚卸に必要となる伝票の発行機能

管理対象と役割が大きな違い

在庫管理システムとWMSを比較する場合は、「管理対象」と「役割」に着目しましょう。

まずWMSが管理するのは「倉庫内全般」です。商品はもちろん、倉庫内での作業も管轄に入ります。ただし、あくまでも"その倉庫の中のコト・モノ"である点がポイントです。

在庫管理システムが管理するのは原則として「在庫データ」です。複数の倉庫や店舗を持っている企業であれば、ひとつの倉庫内の在庫だけでなく、全体の在庫についても管理が必要になります。また、在庫データには数量やロケーションだけでなく、責任や資産性が紐付きます。そのため、財務管理や経営戦略などにも関わりが深いのが特徴です。

次に、それぞれの役割についても見ていきましょう。前述のとおり、在庫管理システムは適切な在庫量の管理・維持によって、企業の利益最大化や在庫責任の所在を明確化するのが大きな目的です。

一方、WMSが担うのは倉庫内の設備管理・人員配置の最適化です。導入によって作業効率を上げ、企業の利益を最大化するという点は共通しますが、筋道が異なると言えるでしょう。

WMSも在庫管理システム?

WMSには、在庫管理機能が含まれています。そのため、WMS自体を「倉庫の在庫管理システム」として利用することが可能です。ただし、事業規模が大きかったり、販売チャネルが多く複数の物流拠点があったり、原価の管理が必要な場合には基幹系システムの導入が推奨されます。この場合は、WMSとの連携によってそれぞれの課題を解決します。

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まとめ WMSを導入する目安

物流現場においてWMSは大きなメリットを発揮します。ただ、導入のタイミングは企業様によって異なります。また、コスト面も考慮しなければなりません。目安として「出荷が1日30~50件以上になるとシステム導入が必要」とも言われていますが、

  • 1日30~50件の出荷でも、SKU数が少ないため誤出荷がほとんどない
  • 商品単価が安く、システムを入れると利益がなくなる

といった条件では導入しない企業様がほとんどだと思います。

ロジザードの経験上、メーカー・小売業では、起業したばかりで初めからシステム投資のできる企業様、または、出荷が1日100件を過ぎたあたりから「システムが必要」と認識される企業様が多いようです。

お取引のある倉庫様は、在庫ズレや誤出荷0(ゼロ)を目指して「ロジザードZERO 」を導入していただいています。荷主様から預かる大切な商品管理を行う現場、物流を支える大事な現場スタッフをサポートするのがWMSです。

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